化学反応とは、原子の組み換えであるが,単に結合を切り,新たに結ぶのではない。
↓
十分な運動エネルギーをもった分子どうしが,まず,正面から衝突することで起こる。
しかし,分子の周囲は負電荷を帯びた電子があるので,電子が接触するまで近づくと電気的な反発力が働いてしまう。
↓
ゆえに,この反発力に打ち勝つのに十分な運動エネルギーを持たせて衝突させる必要がある。
↓
この原子の組み換えの起こる高いエネルギーを活性化エネルギーといい,組み換えの起こる状態を活性化状態という。また,生じる原子の複合体を活性錯体という。
<反応の速度>
反応速度は,反応の種類によってさまざまである。爆発のような一瞬で終わる速い反応と,金属が錆びるような遅い反応がある。
@ 反応速度と濃度
化学反応が起こるためには,まず反応分子どうしが衝突しあわなければならないので,単位時間あたりの反応分子の衝突回数が多いほど,反応速度は大きくなる。
また,反応分子の衝突回数は,単位体積中に存在する反応分子の数,つまり,反応物の濃度に比例するので,濃度が大きいほど反応速度は大きくなる。
補足<表面積>
固体の表面積を大きくすると,反応分子どうしの衝突回数が大きくなって,反応速度が大きくなるので,界面の面積も反応速度に関係する
A 反応速度と温度
一般に化学反応が起こるには,じゅうぶん大きなエネルギーをもった反応物の粒子どうしが衝突する必要もある。反応物を加熱すると,反応物を構成している粒子の熱運動が盛んになり,それらのもっている運動エネルギーが大きくなる。つまり,このような大きなエネルギー=活性化エネルギー以上の粒子どうしが衝突して反応を起こすので,温度が高いほど反応速度は大きくなる。
発熱反応,吸熱反応を問わず温度が高くなるほど大きくなる。一般の気体反応では,温度が10K上昇するごとに,反応速度は2〜3倍になるものが多い。
B 反応速度と触媒
反応の前後でそれ自体は変化しないが,少量でも反応速度に大きな影響を与える物質を触媒といい,触媒はより活性化エネルギーの小さな別の反応経路をつくる働きをもち,触媒のない場合に比べて,反応にあずかる分子の割合が増えるので,触媒により反応速度が大きくなる。
●H2+I2→2HI●
活性化エネルギー=174kJ
↓
Pt触媒ありの時の活性化エネルギー=49kJ
●N2+3H2→2NH3●
活性化エネルギー=234kJ
↓
鉄触媒ありの時の活性化エネルギー=96kJ
●2H2O2→2H2O+O2●
活性化エネルギー=75kJ
↓
Pt触媒ありの時の活性化エネルギー=49kJ
●2H2O2→2H2O+O2●
活性化エネルギー=75kJ
↓
カタラーゼありの時の活性化エネルギー=23kJ
<反応速度>
@ 反応速度…単位時間あたりの反応物の濃度の減少量,または,生成物の濃度の増加量で表す。
A 反応速度式…反応速度と反応物の濃度の関係を表した式。
aA+bB→cCの反応において,v=k×[A]m×[B]n(k:反応速度定数)
補足(律速段階)
2N2O5→4NO2+O2の反応の反応速度はv=k[N2O5]2ではない。
↓
これは,実際は次の3つの素反応が相次いでおこる,多段階反応だからである。
↓
N2O5→N2O3+O2…@
N2O3→NO+NO2…A
N2O5+NO→3NO2…B
↓
@+A+Bより,
N2O5→4NO2+O2
↓
調べてみると,上の3つの素反応のうち,@の反応速度が,AやBの反応速度に比べてはるかに遅い。つまり,@の素反応さえおこれば,あとのAやBの素反応はすぐに進行する。ゆえに,全体の反応速度は,@の素反応の反応速度によってのみ決定される。
↓
このように,多段階反応の中で最も遅い素反応の段階を律速段階という。上式では,@式の素反応が律速段階となるので,全体の反応速厦は,@の素反応の反応速度v=k[N2O5]で表されることになる。
質問等がありましたら,ご遠慮なくどうぞ。
「コメント」欄に,ご記入頂ければ,手軽に済むと思います。宜しくお願い致します。
p.s.
おかげさまで,理論,有機,無機やpoint,Q&Aなど内容が多種類になってまいりました。ゆえに,皆さんにより良く活用頂きたいと思います。
pointとしては,「カテゴリ」の活用です。
大変申し訳ありませんが,投稿がバラバラですので,分野ごとにご覧頂けると幸いです。
【理論の最新記事】