直径10−7〜10−5cmの粒子をコロイド粒子という。
塩化鉄(V)FeCl3水溶液を少しずつ沸騰水に加えると,赤褐色の溶液が得られる。分子やイオンより大きくなった水酸化鉄(V)の粒子は,直径が10−7cm(1nm)から10−5cm(102nm)程度であり,コロイド溶液となる。
FeCl3+3H2O → Fe(OH)3+3HCl
<コロイド粒子の種類>
@分子コロイド
デンプンやタンパク質などの高分子化合物では,分子1個でコロイド粒子の大きさをもつ。このようなコロイドを分子コロイドといい,水に溶かすだけでコロイド溶液になる。
Aミセルコロイド
セッケン分子は,親水基と疎水基の部分からできており,セッケン水がある程度の濃度になると,コロイド溶液となる。これは,50〜100個のセッケン分子が疎水基の部分どうしを内側に,親水基の部分を外側に向けるように集まって,コロイド粒子をつくるからである。このようなコロイドを会合コロイドまたはミセルコロイドという。
B分散コロイド
金属,水酸化物や粘土のように,本来は水に溶けにくい物質でも,適当な方法でコロイド粒子の大きさに砕き,水などに分散させたコロイドを分散コロイドという。
<ゾルとゲル>
@ゾル
希薄なデンプンの水溶液のように,流動性をもったコロイド溶液をゾルという。
Aゲル
比較的濃いデンプンやゼラチン(3〜5%)の水溶液は,高温ではゾルの状態であるが,冷却するとゼリー状に固化してしまう。このように,流動性を失った半固体状のコロイドをゲルという。ゆで卵,豆腐,寒天,こんにゃくなどがゲルの例である。
Bキセロゲル
ゲルは,コロイド粒子どうしが互いにからみ合って網目状につながった構造をもち,すき間に多くの水を含んでいる。ゲルを乾燥させて水を除いたものをキセロゲル(乾燥ゲル)といい,乾いた寒天やゼラチン,高野豆腐,シリカゲルなどがある。キセロゲルは,ゲルに比べて体積が小さく,水が抜け出たためすき間の多い(多孔質)の構造をもつものが多い。また,キセロゲルを水に浸しておくと,水分を吸収してふくれる。これを膨潤という。
<疎水コロイドと親水コロイド>
@疎水コロイド
粒子の表面に水和する水分子が少なく,凝析しやすいコロイド溶液。
(例)水酸化鉄(V)のコロイド溶液,硫黄コロイド,泥水など。
A親水コロイド
粒子の表面に多数の水分子を水和し,凝析しにくいコロイド溶液。
(例)デンプンや卵白・ゼラチンなどの分子コロイド溶液。セッケンなどの会合コロイド。
<コロイド溶液の性質>
@透析
セロハン膜のような半透膜を利用してコロイド粒子とふつうの分子やイオンとを分離する操作。透析によりコロイド溶液を精製することができる。
Aチンダル現象
コロイド溶液に強い光線を当て,側面からみると光の通路が輝いて見える現象。これはコロイド粒子が光を散乱するためである。
Bブラウン運動
コロイド溶液をチンダル現象を利用して限外顕微鏡でみると,コロイド粒子の不規則な運動が見える。これは溶媒分子がコロイド粒子に衝突するために起こる。
C電気泳動
コロイド粒子は正または負に帯電していることが多く,コロイド溶液に電極を入れ直流電圧を加えると,コロイド粒子が帯電している電荷と反対符号の電極へ移動する。
D凝析
疎水コロイドは少量の電解質を加えると沈殿する。この現象を凝析という。
E塩析
親水コロイドでも,多量の電解質を加えると,コロイド粒子から水分子が引きはなされ,沈殿してくる。この現象を塩析という。
F保護コロイド
疎水コロイドの溶液に少量の親水コロイドを加えると,疎水コロイド粒子は親水コロイドの粒子に取り囲まれ,凝析しにくくなる。この親水コロイドを保護コロイドという。
(例)墨汁に加えるニカワなど。
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