むかし,有機化合物は,生体に関連する(生体を構成する,生体が作り出す)物質を意味し,生体反応なしには合成されないものと考えられていた。
しかし,1828年にウェーラーによってシアン酸アンモニウムNH4OCN(無機化合物)から生体反応を利用することなく尿素NH2CONH2(有機化合物)が合成され,それまでの有機化合物の概念が根底から覆された。
ゆえに,現代では,生体との関連性を問わず,炭素骨格を有する化合物であれば有機化合物と理解されている。
※ ただし,二酸化炭素,炭酸塩,シアン化物等は有機化合物と見なされず,無機化合物に分類される。
<元素分析>
C,H,Oを構成元素とする有機化合物を完全燃焼すると,有機化合物中のCはすべてCO2に,HはすべてH2Oになる。
この性質を利用すると,有機化合物の組成式(実験式)を求めること(元素分析)ができる。
○装置○
@ 乾燥したO2を燃焼管に導き,質量を正確に測定した試料CxHyOzをバーナーで加熱して燃焼させる。
A @によって生じたH2Oを塩化カルシウムに完全に吸収させる。(このとき,CO2は吸収されず通過する。)
※ 塩化カルシウムは,乾燥剤である。
B @によって生じ(Aで塩化カルシウム管を通過し)たCO2をソーダ石灰に吸収させる。
※ ソーダ石灰は,塩基性の乾燥剤なので,CO2だけではなくH2Oも吸収してしまうので,必ず塩化カルシウムの後に設置する。
○計算○
塩化カルシウム管の質量変化(試料から発生したH2Oの質量),およびソーダ石灰管の質量変化(試料から発生したCO2の質量)を測定し,以下の手順によって試料の元素組成を分析する。
@ 試料から発生したH2OおよびCO2の質量から,試料に含まれていた各元素の質量を以下のように算出する。
A 以下のように各元素の質量をモル比に変換し,試料の組成式を決定する。
※ 試料に含まれていた各元素の質量比が分かっている場合はAから。
<異性体>
同一の分子式でありながら構造が異なるために性質も異なる分子同士の関係を,互いに異性体であるという。異性体は,その構造の相違性の観点から以下のように分類される。
○構造異性体 :構成原子の結合順列(原子のつながり)の違いによって生じる異性体。
○立体異性体 :原子団の立体配置(空間的な位置関係)の違いによって生じる異性体。
@ 幾何異性体(シス‐トランス異性体)
二重結合などを形成している炭素原子(C=C)に結合した原子あるいは原子団の配置が異なるために生じる異性体。C=Cなどが回転できないことによって生じる。
同一の原子あるいは原子団がC=Cを境として同じ側に向いた配置(上記では左の分子の配置)をシス型配置という。逆に,互いに交差した配置(上記では右側の分子の配置)をトランス型配置という。
※ 炭素間の自由回転出来ない為に生じるので,環状構造でも幾何異性体を生じる。
A 光学異性体(鏡像異性体)
不斉炭素原子に結合した原子あるいは原子団の配置が異なる場合に生じる異性体。
光学異性体は互いに物理的性質(沸点,溶解度など)および化学的性質(反応性)は変わらず,光学的性質(旋光性)および生物学的性質(生理活性)が異なる。不斉炭素原子とは,4種の相異なる原子あるいは原子団と結合した炭素原子をいい,C*と表現される。
※ 不斉炭素原子を1つだけもつ光学異性体は互いに鏡像の関係にあると同時に互いに重ね合わせることができないので,鏡像異性体あるいは対掌体とも呼ばれる(左右の手の平同士の関係にある分子という意)。
※ 互いに鏡像体であっても,不斉炭素原子が存在しなければ光学異性体にはならず,同一分子となる。また,不斉炭素原子が2個以上ある場合において,分子内に対称面が存在する場合にも,その鏡像体は同一分子となる。
<官能基>
炭化水素の水素原子を他の原子または原子団で置き換えるといろいろ性質の異なる化合物ができる。
たとえば,CH4は水に溶けない気体だが,その水素原子1個をヒドロキシ基−OHで置き換えたCH3OHは,液体で水によく溶ける性質がある。
ヒドロキシ基のように,その化合物の特性を示す原子または原子団を官能基という。
質問等がありましたら,ご遠慮なくどうぞ。
「コメント」欄に,ご記入頂ければ,手軽に済むと思います。宜しくお願い致します。
p.s.
おかげさまで,理論,有機,無機やpoint,Q&Aなど内容が多種類になってまいりました。ゆえに,皆さんにより良く活用頂きたいと思います。
pointとしては,「カテゴリ」の活用です。
大変申し訳ありませんが,投稿がバラバラですので,分野ごとにご覧頂けると幸いです。
【有機の最新記事】