●●● 目次 ●●●
@ 電子配置
A 希ガス型の電子配置
B 電子軌道≪おすすめ≫
C K・Caと遷移元素の電子配置
≪おすすめ≫
<電子配置>
電子が多数ある場合,原子の周りにいくつかの層に分かれて存在している。この層を電子殻という。
内側からK殻,L殻,M殻,N殻……と呼び,各電子殻に入り得る電子の最大数はそれぞれ2コ,8コ,18コ,32コ……と決まっている。
K殻,L殻,M殻,N殻……は,アルファベット順で,2コ,8コ,18コ,32コ……は,2n2で表せる。nはK殻ならば1,L殻なら2で計算する。
K殻は1殻目なので2×12=2
L殻は2殻目なので2×22=8
M殻は3殻目なので2×32=18
N殻は4殻目なので2×42=32
1H(総電子数1)(総電子数は原子番号と同じ)
=K(1)
(K殻に1個)
2He(総電子数2)
=K(2)
3Li(総電子数3)
=K(2)L(1)
(K殻に2個,L殻に1個)
4Be(総電子数4)
=K(2)L(2)
5B(総電子数5)
=K(2)L(3)
6C(総電子数6)
=K(2)L(4)
7N(総電子数7)
=K(2)L(5)
8O(総電子数8)
=K(2)L(6)
9F(総電子数9)
=K(2)L(7)
10Ne(総電子数10)
=K(2)L(8)
11Na(総電子数11)
=K(2)L(8)M(1)
12Mg(総電子数12)
=K(2)L(8)M(2)
13Al(総電子数13)
=K(2)L(8)M(3)
14Si(総電子数14)
=K(2)L(8)M(4)
15P(総電子数15)
=K(2)L(8)M(5)
16S(総電子数16)
=K(2)L(8)M(6)
17Cl(総電子数17)
=K(2)L(8)M(7)
18Ar(総電子数18)
=K(2)L(8)M(8)
19K(総電子数19)
=K(2)L(8)M(8)N(1)
20Ca(総電子数20)
=K(2)L(8)M(8)N(2)
電子は,原則として内側の殻から順に満たされていく。電子の中で,最も外側の電子殻に属する電子を最外殻電子という。
最外殻電子は,内側の殻の電子と比べてやや不安定で,他の原子などに作用しやすいので,化学的性質に関わりがある。
最外殻にあり化学的性質などに関わる1〜7個の電子を特に価電子という。
価電子は,原子価電子ともいい,一般には原子のいちばん外側の電子殻にある電子のことで,原子価や化学的性質を決定しているのでこの名がある。基本的に,化学的性質に関与している電子を,特に価電子と考えるとよい。
1H=K(1)
→最外殻電子1コ,価電子1コ
2He=K(2)
→最外殻電子2コ,価電子0コ
3Li=K(2)L(1)
→最外殻電子1コ,価電子1コ
4Be=K(2)L(2)
→最外殻電子2コ,価電子2コ
5B=K(2)L(3)
→最外殻電子3コ,価電子3コ
6C=K(2)L(4)
→最外殻電子4コ,価電子4コ
7N=K(2)L(5)
→最外殻電子5コ,価電子5コ
8O=K(2)L(6)
→最外殻電子6コ,価電子6コ
9F=K(2)L(7)
→最外殻電子7コ,価電子7コ
10Ne=K(2)L(8)
→最外殻電子8コ,価電子0コ
11Na=K(2)L(8)M(1)
→最外殻電子1コ,価電子1コ
12Mg=K(2)L(8)M(2)
→最外殻電子2コ,価電子2コ
13Al=K(2)L(8)M(3)
→最外殻電子3コ,価電子3コ
14Si=K(2)L(8)M(4)
→最外殻電子4コ,価電子4コ
15P=K(2)L(8)M(5)
→最外殻電子5コ,価電子5コ
16S=K(2)L(8)M(6)
→最外殻電子6コ,価電子6コ
17Cl=K(2)L(8)M(7)
→最外殻電子7コ,価電子7コ
18Ar=K(2)L(8)M(8)
→最外殻電子8コ,価電子0コ
19K=K(2)L(8)M(8)N(1)
→最外殻電子1コ,価電子1コ
20Ca=K(2)L(8)M(8)N(2)
→最外殻電子2コ,価電子2コ
(典型元素の)最外殻電子数は,族番号の1の位の数字に一致する。価電子数も,基本的には族番号の1の位の数字に一致する(18族は例外で0)。
1族=最外殻電子1コ,価電子1コ
2族=最外殻電子2コ,価電子2コ
13族=最外殻電子3コ,価電子3コ
14族=最外殻電子4コ,価電子4コ
15族=最外殻電子5コ,価電子5コ
16族=最外殻電子6コ,価電子6コ
17族=最外殻電子7コ,価電子7コ
18族=最外殻電子2or8コ,価電子0コ
(遷移元素の価電子は,内殻に電子が増加,収容されるため価電子は1〜2個)
ほとんどの原子は,最外殻に2個あるいは8個の電子を持っていると安定するので,最外殻電子を8個=閉殻(最外殻がK殻の場合は2個)にしようとする傾向があり,そのため他原子と結合したり,イオンになったりする。(最外殻電子が8個だと,空間にバランスよく存在するので安定になる)
<希ガス型の電子配置>
希ガスは,最外殻にヘリウムなら2個,その他は全て8個の電子を持っており,原子は安定している。
このように閉殻である希ガス原子は,他の原子に結合しないので価電子は0個とする。最外殻電子数(8個,Heのみ2個)とは一致しないので注意。
●価電子 ……… 0コ
●最外殻電子 ……… 8コ
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<電子軌道>
K殻以外の電子殻は,いくつかの電子軌道(副殻)に分けられる。
@ 電子軌道の種類
電子軌道は,その形状によって,s軌道,p軌道,d軌道…と区別されており,s軌道は球形の軌道,p軌道は亜鈴形の軌道で形は等しく方向性の異なる3つの軌道,d軌道は形と方向性の異なる5つの軌道からなる。
↓
↓
↓
A 各電子殻の構成
各軌道は,それぞれが所属する電子殻から,1s,2s,2p,3s,3p,3d,4s,4p,4d,4f軌道…と区別されている。
●K殻●
1つのs軌道(1s)のみ。
●L殻●
1つのs軌道(2s)と,3つのp軌道(2px,2py,2pz)に分けられる。
●M殻●
1つのs軌道(3s)と,3つのp軌道(3px,3py,3pz)と,5つのd軌道(3d)に分けられる。
●N殻●
1つのs軌道(4s)と,3つのp軌道(4px,4py,4pz)……に分けられる。
↓
↓
↓
B 規則性
各電子軌道には自転方向の異なる2個の電子しか入ることはできない。これをパウリの禁制律という。よって,s軌道には1×2=2個,p軌道には3×2=6個,d軌道には5×2=10個の電子しか入れない。(電子は自転しながら各電子軌道を運動している。この電子の自転を電子スピンといい,右回りと左回りがあり,通常,↑および↓の記号で区別する)
エネルギー準位の等しい軌道に対して,電子は最初,1個ずつ分かれて入る。これをフントの規則という。
↓
↓
↓
@ABより,エネルギー準位の低い電子軌道から順に電子を入れていけば,各原子の詳しい電子配置が書ける。
1H=K(1)
→1s軌道に1個
(M殻)
3p( )( )( )
3s( )
(L殻)
2p( )( )( )
2s( )
(K殻)
1s(↑ )
2He=K(2)
→1s軌道に2個
3p( )( )( )
3s( )
2p( )( )( )
2s( )
1s(↑↓)
3Li=K(2)L(1)
→1s軌道に2個,2s軌道に1個
3p( )( )( )
3s( )
2p( )( )( )
2s(↑ )
1s(↑↓)
4Be=K(2)L(2)
→1s軌道に2個,2s軌道に2個
3p( )( )( )
3s( )
2p( )( )( )
2s(↑↓)
1s(↑↓)
5B=K(2)L(3)
→1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に1個
3p( )( )( )
3s( )
2p(↑ )( )( )
2s(↑↓)
1s(↑↓)
L殻の3コは,2sの2コと2pの1コに分けられる。これが重要
6C=K(2)L(4)
→1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に2個
3p( )( )( )
3s( )
2p(↑ )(↑ )( )
2s(↑↓)
1s(↑↓)
7N=K(2)L(5)
→1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に3個
3p( )( )( )
3s( )
2p(↑ )(↑ )(↑ )
2s(↑↓)
1s(↑↓)
8O=K(2)L(6)
→1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に4個
3p( )( )( )
3s( )
2p(↑↓)(↑ )(↑ )
2s(↑↓)
1s(↑↓)
9F=K(2)L(7)
→1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に5個
3p( )( )( )
3s( )
2p(↑↓)(↑↓)(↑ )
2s(↑↓)
1s(↑↓)
10Ne=K(2)L(8)
→1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に6個
3p( )( )( )
3s( )
2p(↑↓)(↑↓)(↑↓)
2s(↑↓)
1s(↑↓)
11Na=K(2)L(8)M(1)
→1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に6個,3s軌道に1個
3p( )( )( )
3s(↑ )
2p(↑↓)(↑↓)(↑↓)
2s(↑↓)
1s(↑↓)
12Mg=K(2)L(8)M(2)
→1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に6個,3s軌道に2個
3p( )( )( )
3s(↑↓)
2p(↑↓)(↑↓)(↑↓)
2s(↑↓)
1s(↑↓)
13Al=K(2)L(8)M(3)
→1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に6個,3s軌道に2個,3p軌道に1個
3p(↑ )( )( )
3s(↑↓)
2p(↑↓)(↑↓)(↑↓)
2s(↑↓)
1s(↑↓)
14Si=K(2)L(8)M(4)
→1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に6個,3s軌道に2個,3p軌道に2個
3p(↑ )(↑ )( )
3s(↑↓)
2p(↑↓)(↑↓)(↑↓)
2s(↑↓)
1s(↑↓)
15P=K(2)L(8)M(5)
→1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に6個,3s軌道に2個,3p軌道に3個
3p(↑ )(↑ )(↑ )
3s(↑↓)
2p(↑↓)(↑↓)(↑↓)
2s(↑↓)
1s(↑↓)
16S=K(2)L(8)M(6)
→1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に6個,3s軌道に2個,3p軌道に4個
3p(↑↓)(↑ )(↑ )
3s(↑↓)
2p(↑↓)(↑↓)(↑↓)
2s(↑↓)
1s(↑↓)
17Cl=K(2)L(8)M(7)
→1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に6個,3s軌道に2個,3p軌道に5個
3p(↑↓)(↑↓)(↑ )
3s(↑↓)
2p(↑↓)(↑↓)(↑↓)
2s(↑↓)
1s(↑↓)
18Ar=K(2)L(8)M(8)
→1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に6個,3s軌道に2個,3p軌道に6個
3p(↑↓)(↑↓)(↑↓)
3s(↑↓)
2p(↑↓)(↑↓)(↑↓)
2s(↑↓)
1s(↑↓)
<K・Caと遷移元素の電子配置>
19K,20Caでは,内側から順に3p軌道まで電子が入り,続いてM殻の3d軌道に電子が入りそうだが,M殻の3d軌道よりもN殻の4s軌道の方がわずかにエネルギー準位が低いため,M殻の3d軌道を空にしたまま,N殻の4s軌道へ電子が入る。
19K=1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に6個,3s軌道に2個,3p軌道に6個,
20Ca=1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に6個,3s軌道に2個,3p軌道に6個,
ゆえに,
19K=K殻2コ,L殻8コ,
20Ca=K殻2コ,L殻8コ,
となるのである。
さらに続く21Scから30Znまでは,N殻の4p軌道よりエネルギー準位の低いM殻の3d軌道へ電子が入っていく。
21Sc =1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に6個,3s軌道に2個,3p軌道に6個,3d軌道に1個,4s軌道に2個
22Ti =1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に6個,3s軌道に2個,3p軌道に6個,3d軌道に2個,4s軌道に2個
23V =1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に6個,3s軌道に2個,3p軌道に6個,3d軌道に3個,4s軌道に2個
24Cr =1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に6個,3s軌道に2個,3p軌道に6個,3d軌道に5個,4s軌道に1個
25Mn =1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に6個,3s軌道に2個,3p軌道に6個,3d軌道に5個,4s軌道に2個
26Fe =1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に6個,3s軌道に2個,3p軌道に6個,3d軌道に6個,4s軌道に2個
27Co =1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に6個,3s軌道に2個,3p軌道に6個,3d軌道に7個,4s軌道に2個
28Ni =1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に6個,3s軌道に2個,3p軌道に6個,3d軌道に8個,4s軌道に2個
29Cu =1s軌道に2個,2s軌道に2個,2p軌道に6個,3s軌道に2個,3p軌道に6個,3d軌道に10個,4s軌道に1個
上記の要点を確認したら,「Q&A」で腕試し!
→「Q&A 特選17問!電子配置とイオン」へ
質問等がありましたら,ご遠慮なくどうぞ。
「コメント」欄に,ご記入頂ければ,手軽に済むと思います。宜しくお願い致します。
p.s.
おかげさまで,理論,有機,無機やpoint,Q&Aなど内容が多種類になってまいりました。ゆえに,皆さんに読みやすく活用頂きたいと思います。
pointとしては,「カテゴリ」の活用です。
大変申し訳ありませんが,投稿がバラバラですので,分野ごとにご覧頂けると幸いです。
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