【理論】原子構造,安定同位体と放射性同位体
2015年02月22日

【理論】原子構造,安定同位体と放射性同位体

<原子構造>
 物質を構成する基本粒子を,原子という。

 原子は,中心に正の電荷を持つ原子核があり,その周りに負の電荷を持つ電子がある。

 原子核は,正電荷を持つ陽子と,電荷をもたない中性子とからなる。

 原子構造.jpg

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@ 原子の大きさは,直径10−8cm程度で,原子核の大きさは直径10−13〜10−12cm程度である。

A 原子の質量に関しては,電子の質量が陽子や中性子の1/1840ととても軽いので,陽子数+中性子数質量数という。
(電子の質量は,陽子・中性子に比べてとても小さいので,原子の質量は,陽子・中性子に依るところが多い。陽子,中性子の質量はほぼ同じ)

B 陽子数を,原子番号という。

C 原子の構成を表すには,元素記号の左下に原子番号,左上に質量数を記す。


■■■解答のpoint■■■
・原子では(電荷をもたないので),
   電子=陽子=原子番号
・原子の種類=陽子数=原子番号
・原子の性質=電子数






<同位体>
 互いに原子番号(陽子数)が等しく,質量数(中性子数)の異なる原子同士を同位体(アイソトープ)という。同位体は同一の元素であるから,互いに化学的性質は変わらず,質量のみが異なる。

●同位体●
 原子番号が等しく,質量数の異なる原子
(同素体=同一の元素からなる単体で,性質の異なるもの。)

(例)
 1Hと2Hと3Hや12Cと13Cと14C。
9F,11Na,13Alは天然では同位体が存在しない)



■■■解答のpoint■■■
同位体=簡単に言えば,同じ元素だが,重さが異なるもの。
■■■解答のpoint■■■
 言い方にも注意
「原子番号」が等しく「質量数」が異なるもの
 ↓原子番号=陽子数なので
「陽子数」が等しく「質量数」が異なるもの
 ↓陽子数+中性子数=質量数なので
「陽子数」が等しく「中性子数」が異なるもの



 また,放射線(α線:He原子核,β線:電子,γ線:電磁波)とよばれる粒子やエネルギーを放出して,他の原子に変わる同位体を放射性同位体(ラジオアイソトープ)という。

※ 放射性同位体=3H14C




<原子核懐変(崩壊)>
 物体から放出される高エネルギーの粒子線のα線β線および電磁波のγ線などを総称して放射線という。(γ線はX線より波長の短い(0.07〜1Å)高エネルギーの電磁波で,α壊変,β壊変に伴って余分になったエネルギーがγ線として放出されることが多い。ただし,原子番号・質量数ともに変化はおこらない。)

 放射性同位体が放射線を放出して安定な原子核へ変化していく現象を原子核の壊変といい,α壊変とβ壊変の2種類がある。

@ α壊変
 主に,原子番号84のポロニウムPo以上の重い原子核でおこりやすく,α線を放射する変化。α線とは,原子核から放射されるヘリウムHeの原子核と同じα粒子(陽子2コと中性子2コ)の流れであり,1回のα壊変で原子番号が2,質量数が4減少する。
  88Ra→86Rn+2He2+(α線)

A β壊変
 陽子の数と中性子の数のバランス比のわるい原子核でおこりやすく,β線を放射する変化。β線とは,核内の中性子が陽子に変わったときに核外へ放出された電子の流れであり,この電子は核外電子ではない。したがって,中性子から陽子への変化により,原子番号が1増加するが,質量数は変化しない。

  20150220143937-000211111.jpg
  14C→14N+e (β線)

 β壊変では,ふつう核内で中性子が陽子に変化して,質量がわずかに減少し,この分のエネルギーがeと一緒に放出される。よって,この変化は自発的におこる。一方,核内で陽子が中性子に変化する場合には,核外に陽電子eが放出され,原子番号が1減少することになる。しかし,陽子から中性子に変化するには質量が増加しなければならず,外部からのエネルギーを与えない限り,この変化が自発的におこることは少ない。

※ α壊変;(陽子数)−2 (中性子数)−2 (質量数)−4
※ β壊変;(陽子数)+1 (中性子数)−1 (質量数)±0





<年代特定>
 大気中には放射性同位体14Cが存在する。これは太陽からの宇宙線の影響により,大気中の窒素原子に中性子が当たって絶えず作られているからであり,また生成した14Cはβ壊変により一比の割合で減少もしていくので,その存在比は12C:14C=1:1×10−12とほぼ一定している。
  N+n→ C+p (n:中性子,p:陽子 を表す)

 ゆえに,生物の遺体(木材,貝殻,骨,化石など)の14Cの存在比を測定すれば,死後経過時間がわかり,逆にそれらが生存していた年代を推定できる。

 動植物の体内にも14Cは取り込まれるので,大気中と同じ値で存在する。 しかし,生物が死滅すると,外界からの14Cの補給がなくなり14Cの存在比はβ壊変により一比の割合で減少していくだけになる。一般に放射性同位体が壊変していき,もとの半分の量になるまでの時間を半減期といい,各原子によって決まっているので,減少量を考えれば年代測定が出来る。

 例えば,14Cの半減期は約5760年であるので,遺跡から発掘された木片の14Cの量が現在の生木の14Cの量の1/2であれば,この木片はおよそ14Cの半減期に等しい5760年前のものと推定できる。





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posted by アボガドロ at 12:06 | Comment(3) | TrackBack(0) | 理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
動植物が死んでβ壊変によりCが一定の割合で無くなっていくと書いてありますが、なぜβ壊変が起こるのでしょうか??どういう時にβ壊変が起こるのでしょうか??
Posted by (´༎ຶོρ༎ຶོ`) at 2017年01月04日 23:36
コメントありがとうございます。

放射性同位体は、原子核的に不安定であることなどから、生成した直後から一定速度で、安定な原子核になるために壊変していきます。

取り急ぎ、簡潔な返答にさせて頂きました。
いかがでしょうか?
まだ、不明な事があったら、遠慮なく質問して下さい。

> (´༎ຶོρ༎ຶོ`)さん
>
> 動植物が死んでβ壊変によりCが一定の割合で無くなっていくと書いてありますが、なぜβ壊変が起こるのでしょうか??どういう時にβ壊変が起こるのでしょうか??
Posted by アボガドロ at 2017年01月05日 02:16
原子番号6質量数14の炭素が
ベータ線を放出してほかの原子に変わった場合
原子番号と質量数はどうなるかという問題が
学校で出たのですが、答えが原子番号が7
質量数が14の窒素が答えでした。なぜこうなるのですか?
Posted by いけ at 2017年05月19日 01:12
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