【理論】 【有機】 【無機】
2016年04月14日

【理論】反応速度と反応速度式

<反応の仕組み>
 化学反応とは、原子の組み換えであるが,単に結合を切り,新たに結ぶのではない。
   ↓
十分な運動エネルギーをもった分子どうしが,まず,正面から衝突することで起こる。
 反応の仕組み.jpg
 しかし,分子の周囲は負電荷を帯びた電子があるので,電子が接触するまで近づくと電気的な反発力が働いてしまう。
   ↓
ゆえに,この反発力に打ち勝つのに十分な運動エネルギーを持たせて衝突させる必要がある。
   ↓
この原子の組み換えの起こる高いエネルギーを活性化エネルギーといい,組み換えの起こる状態を活性化状態という。また,生じる原子の複合体を活性錯体という。

反応の仕組み.jpg



<反応の速度>
 反応速度は,反応の種類によってさまざまである。爆発のような一瞬で終わる速い反応と,金属が錆びるような遅い反応がある。

@ 反応速度と濃度 
 化学反応が起こるためには,まず反応分子どうしが衝突しあわなければならないので,単位時間あたりの反応分子の衝突回数が多いほど,反応速度は大きくなる。

 また,反応分子の衝突回数は,単位体積中に存在する反応分子の数,つまり,反応物の濃度に比例するので,濃度が大きいほど反応速度は大きくなる。

補足<表面積> 
 固体の表面積を大きくすると,反応分子どうしの衝突回数が大きくなって,反応速度が大きくなるので,界面の面積も反応速度に関係する


A 反応速度と温度 
 一般に化学反応が起こるには,じゅうぶん大きなエネルギーをもった反応物の粒子どうしが衝突する必要もある。反応物を加熱すると,反応物を構成している粒子の熱運動が盛んになり,それらのもっている運動エネルギーが大きくなる。つまり,このような大きなエネルギー=活性化エネルギー以上の粒子どうしが衝突して反応を起こすので,温度が高いほど反応速度は大きくなる。

 発熱反応,吸熱反応を問わず温度が高くなるほど大きくなる。一般の気体反応では,温度が10K上昇するごとに,反応速度は2〜3倍になるものが多い。


B 反応速度と触媒 
 反応の前後でそれ自体は変化しないが,少量でも反応速度に大きな影響を与える物質を触媒といい,触媒はより活性化エネルギーの小さな別の反応経路をつくる働きをもち,触媒のない場合に比べて,反応にあずかる分子の割合が増えるので,触媒により反応速度が大きくなる。

●H2+I2→2HI●
活性化エネルギー=174kJ
 ↓
Pt触媒ありの時の活性化エネルギー=49kJ

●N2+3H2→2NH3
活性化エネルギー=234kJ
 ↓
鉄触媒ありの時の活性化エネルギー=96kJ

●2H2O2→2H2O+O2
活性化エネルギー=75kJ
 ↓
Pt触媒ありの時の活性化エネルギー=49kJ

●2H2O2→2H2O+O2
活性化エネルギー=75kJ
 ↓
カタラーゼありの時の活性化エネルギー=23kJ


<反応速度>
@ 反応速度…単位時間あたりの反応物の濃度の減少量,または,生成物の濃度の増加量で表す。

A 反応速度式…反応速度と反応物の濃度の関係を表した式。
 aA+bB→cCの反応において,v=k×[A]m×[B]n(k:反応速度定数)


補足(律速段階)
 2N2O5→4NO2+O2の反応の反応速度はv=k[N2O5]2ではない。
  ↓
これは,実際は次の3つの素反応が相次いでおこる,多段階反応だからである。
  ↓
N2O5→N2O3+O2…@
N2O3→NO+NO2…A
N2O5+NO→3NO2…B
  ↓
@+A+Bより, 
 N2O5→4NO2+O2
  ↓
調べてみると,上の3つの素反応のうち,@の反応速度が,AやBの反応速度に比べてはるかに遅い。つまり,@の素反応さえおこれば,あとのAやBの素反応はすぐに進行する。ゆえに,全体の反応速度は,@の素反応の反応速度によってのみ決定される。
  ↓
このように,多段階反応の中で最も遅い素反応の段階を律速段階という。上式では,@式の素反応が律速段階となるので,全体の反応速厦は,@の素反応の反応速度v=k[N2O5]で表されることになる。





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2016年02月09日

【理論】コロイド

<コロイド粒子>
 直径10−7〜10−5cmの粒子をコロイド粒子という。  
 
 塩化鉄(V)FeCl3水溶液を少しずつ沸騰水に加えると,赤褐色の溶液が得られる。分子やイオンより大きくなった水酸化鉄(V)の粒子は,直径が10−7cm(1nm)から10−5cm(102nm)程度であり,コロイド溶液となる。 

 FeCl3+3H2O → Fe(OH)3+3HCl





<コロイド粒子の種類>
@分子コロイド 
 デンプンやタンパク質などの高分子化合物では,分子1個でコロイド粒子の大きさをもつ。このようなコロイドを分子コロイドといい,水に溶かすだけでコロイド溶液になる。

Aミセルコロイド
 セッケン分子は,親水基と疎水基の部分からできており,セッケン水がある程度の濃度になると,コロイド溶液となる。これは,50〜100個のセッケン分子が疎水基の部分どうしを内側に,親水基の部分を外側に向けるように集まって,コロイド粒子をつくるからである。このようなコロイドを会合コロイドまたはミセルコロイドという。

B分散コロイド
 金属,水酸化物や粘土のように,本来は水に溶けにくい物質でも,適当な方法でコロイド粒子の大きさに砕き,水などに分散させたコロイドを分散コロイドという。





<ゾルとゲル>
@ゾル
 希薄なデンプンの水溶液のように,流動性をもったコロイド溶液をゾルという。

Aゲル
 比較的濃いデンプンやゼラチン(3〜5%)の水溶液は,高温ではゾルの状態であるが,冷却するとゼリー状に固化してしまう。このように,流動性を失った半固体状のコロイドをゲルという。ゆで卵,豆腐,寒天,こんにゃくなどがゲルの例である。

Bキセロゲル
 ゲルは,コロイド粒子どうしが互いにからみ合って網目状につながった構造をもち,すき間に多くの水を含んでいる。ゲルを乾燥させて水を除いたものをキセロゲル(乾燥ゲル)といい,乾いた寒天やゼラチン,高野豆腐,シリカゲルなどがある。キセロゲルは,ゲルに比べて体積が小さく,水が抜け出たためすき間の多い(多孔質)の構造をもつものが多い。また,キセロゲルを水に浸しておくと,水分を吸収してふくれる。これを膨潤という。





<疎水コロイドと親水コロイド>
@疎水コロイド 
 粒子の表面に水和する水分子が少なく,凝析しやすいコロイド溶液。
(例)水酸化鉄(V)のコロイド溶液,硫黄コロイド,泥水など。

A親水コロイド
 粒子の表面に多数の水分子を水和し,凝析しにくいコロイド溶液。
(例)デンプンや卵白・ゼラチンなどの分子コロイド溶液。セッケンなどの会合コロイド。





<コロイド溶液の性質>
@透析
 セロハン膜のような半透膜を利用してコロイド粒子とふつうの分子やイオンとを分離する操作。透析によりコロイド溶液を精製することができる。
 透析.jpg

Aチンダル現象
 コロイド溶液に強い光線を当て,側面からみると光の通路が輝いて見える現象。これはコロイド粒子が光を散乱するためである。
 チンダル現象.jpg
            
Bブラウン運動
 コロイド溶液をチンダル現象を利用して限外顕微鏡でみると,コロイド粒子の不規則な運動が見える。これは溶媒分子がコロイド粒子に衝突するために起こる。

C電気泳動
 コロイド粒子は正または負に帯電していることが多く,コロイド溶液に電極を入れ直流電圧を加えると,コロイド粒子が帯電している電荷と反対符号の電極へ移動する。

D凝析
 疎水コロイドは少量の電解質を加えると沈殿する。この現象を凝析という。

E塩析
 親水コロイドでも,多量の電解質を加えると,コロイド粒子から水分子が引きはなされ,沈殿してくる。この現象を塩析という。

F保護コロイド
 疎水コロイドの溶液に少量の親水コロイドを加えると,疎水コロイド粒子は親水コロイドの粒子に取り囲まれ,凝析しにくくなる。この親水コロイドを保護コロイドという。
(例)墨汁に加えるニカワなど。





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2015年12月17日

【理論】蒸気圧降下,沸点上昇,凝固点降下など

<蒸気圧降下>
 一般に,不揮発性の物質を溶かした溶液の蒸気圧は,純溶媒が示す蒸気圧よりも小さくなる。

 この現象を,蒸気圧降下

 これは,溶液中に不揮発性溶質が存在していると,不揮発性溶質の分だけ溶媒粒子の蒸発が阻害され,溶液の蒸気圧が減少するからである。
 よって,不揮発性溶質が存在している溶液の蒸気圧は,純溶媒の示す蒸気圧よりも小さくなる。

 蒸気圧降下.jpg


補足(ラウールの法則)
 蒸気圧降下がどのくらい起こるかは,蒸発するのを阻害している不揮発性溶質の量で決まる。つまり,下がった後の蒸気圧は,溶媒のモル分率に比例する。

 P0を純溶媒の蒸気圧,Nを溶媒のモル数,nを溶質のモル数とすると,

  P=P0×溶媒のモル分率 (ラウールの法則)
  P=P0×N/(N+n)

また,このときの蒸気圧降下度を儕とすると,儕=P0−Pと表せるので,
  儕=P0−P
  儕=P0−P0×N/(N+n)
  儕=P0×n/(N+n)





<沸点上昇>
 不揮発性の物質を溶かした溶液では,蒸気圧降下のため蒸気圧が小さくなっており,蒸気圧が大気圧と等しくなる温度が高くなる。
 
 蒸気圧が大気圧と等しくなり,液体の表面だけでなく内部からも蒸発が起こる温度のことを沸点というので,溶液では沸点が高くなる。

 この現象を沸点上昇といい,希薄溶液では一般に次式が成り立つ。

  b=kb×m

 ここで,mは全溶質粒子の質量モル濃度であり,kbモル沸点上昇と呼ばれ溶媒の種類によって決まる比例定数である。





<凝固点降下>
 不揮発性の物質を溶かした溶液は,溶質粒子の存在のために溶媒の凝固が妨げられる。その結果,溶液の凝固点は純溶媒の凝固点よりも低くなる。

 この現象を凝固点降下といい,希薄溶液では一般に次式が成り立つ。

  f=kf×m

 ここで,mは全溶質粒子の質量モル濃度であり,kfモル凝固点降下と呼ばれ,溶媒の種類によって決まる比例定数である。





<冷却曲線>
@純溶媒
 水を冷却していくと,液温は時間とともに一定の割合で降下するが,通常,水の凝固点の0℃になっても凝固は始まらず,温度は下がり続ける。
 このように,凝固点以下になっても,液体のままで存在している状態を過冷却という。この状態は結晶核ができるまでの過渡的で不安定な状態である。
 また,この過冷却に伴い,いったん凝固し始めるとそれまで凝固していなかった分が一気に凝固する為,多量の凝固熱が発生して液温が上昇する。その後は冷却と凝固熱がつり合い液温は一定のまま凝固が進行する。


A溶液
 溶液の凝固では,先に溶媒だけが凝固するので,溶液の濃度は次第に濃くなっていく。よって,溶液の凝固点降下により,液温が次第に下がる。





<束一性>
 束一性とは,不揮発性溶質の希薄溶液における状態変化などに関することで,「存在する溶質粒子の数だけに依存する」という性質のことである。
 
 状態変化は,固体⇔液体⇔気体の物理変化のことだが,希薄溶液のように純溶媒に不純物が少量混在していると純溶媒の状態変化が不純物に阻害され,純溶媒の沸点や凝固点が変化する。
 
 したがって,蒸気圧降下, 沸点上昇, 凝固点降下, 浸透圧は同一溶媒であれば溶質の種類によらず質量モル濃度(浸透圧の場合はモル濃度)だけで決まる。

 しかし,粒子の種類は問わないので希薄溶液の束一性は,電解質なら電離後の全溶質粒子の濃度を考えなければならないし,溶質が会合する場合には,会合後の全溶質粒子の濃度を考えなければならない。





<浸透圧>
 インクを水に滴下すると広がるように,濃度の異なる溶液を混合すると濃度が均一になるように溶質が拡散する。

 しかし,図のような状態では,全体の濃度が均一になるために溶質粒子が半透膜を通過できない為に,溶媒分子が純溶媒側から溶液側へと移動して,溶液の濃度を薄めようとする。これが,浸透

 浸透圧.jpg

 浸透が進み左右に液面差を生じると,その差の分が下向きの力となって水の浸透を妨げるようになり,やがて水の浸透が止まり平衡状態になる。

 もし,水の浸透を阻止して,左右の液面を同じ高さに保つためには,溶液側に余分な力を加えなければならない。このとき加える圧力が溶液の浸透圧

 
補足<半透膜>
 溶媒分子は通過できるが,溶質粒子は通過できない膜。


補足<浸透圧算出>
 希薄溶液の浸透圧π〔Pa〕は,その溶液のモル濃度C〔mol/L〕と絶対温度T〔K〕に比例し,溶質や溶媒の種類には無関係である。(ファントホッフの法則)
 
  π=C×R×T  (Rは気体定数)
 (π×V=n×R×T)





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2015年09月02日

【理論】三態変化

<三態>
 氷(固体)は,太陽の熱などで熱せられると水(液体)になり,さらに水蒸気(気体)になる。このように物質は一般に,固体液体気体のいずれかの状態をとる。

 固体=粒子が密に接している。
 液体=粒子がまあまあ接している。
 気体=粒子がバラバラ。

 では,なぜ状態に違いが生じるのかというと,物質の構成粒子は,


@ 絶えず不規則な熱運動をしており,互いにバラバラになろうとする傾向があり,

A また,粒子間には引力が働いており,互いに集合しようとする傾向があるからである。
  a.jpg


 つまり,この相反する2つの傾向の大小関係によって物質の状態が決まるのである。


■固体■……粒子の熱運動 < 粒子間引力 
 各粒子は引力によって束縛され,一定の位置に固定されている。しかし,この定位置を中心としたわずかの熱運動(振動)は行っている。

●●●誤答point●●●●●●●●●●●●
 固体は一定の位置に固定されているが,運動をしていないわけではなく,振動はしている。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●


■液体■……粒子の熱運動 ≒ 粒子間引力
 粒子間に引力は働いているが,ある程度自由な熱運動もしていて,固体のように粒子の位置は固定されていない。一般に,固体が液体になると10%程度の体積増加が起こる。


■気体■……粒子の熱運動 > 粒子間引力
 粒子は熱運動が激しく,粒子間の引力に打ち勝って空間を自由に運動している。一般に,液体が気体になると約1000倍に体積(粒子間距離で約10倍)が増加する。粒子間の距離がこれだけ大きくなると,粒子間に働く引力はほとんど0になる。



補足(熱運動)
 物質に熱を加えると熱は物質の粒子(分子,イオンなど)の振動,回転,移動などの運動を激しくする。この運動を熱運動といい,その激しさは温度(絶対温度)に比例する。





<三態変化>
●融解●
 固体が液体になる現象を,融解という。純物質の固体ではその固体に固有な一定温度で融解する。この温度を融点という。

●蒸発●
 液体が気体になる現象を,蒸発という。分子間力にうち勝つだけの大きな熱エネルギーをもつ分子が,液体の表面から飛び出して気体になる。

●凝縮●
 気体が液体になる現象を,凝縮という。

●凝固●
 液体が固体になる現象を,凝固という。

●昇華●
 固体と気体との相互の変化を,昇華という。 

 b.jpg





<沸騰>
 液体を加熱していくと,表面でのみ気体になる現象(蒸発)が起こる。
   ↓
 やがて,蒸気圧が大気圧に等しくなると,液体の内部からも気体になる。
   ↓
 この液体の内部からも気体になる現象を,沸騰という。
 この温度を沸点といい,とくに,蒸気圧が1.013×105Paとなる温度を標準沸点といい,一般に沸点といえば,この標準沸点を意味する。

●●●要点!●●●●●●●●●●●●●●
 沸騰=液体の内部からも気体になる現象。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●





<沸騰のメカニズム>
 沸騰が起こるのは,
@低温状態で液体の内部に気泡が生じても,その気泡の圧力(低温下の蒸気圧)は小さいので,大気圧により直ちに気泡は押しつぶされてしまう。
   ↓
Aしかし,高温になり,気泡内の圧力(高温時の蒸気圧)が大気圧と等しくなると,生じた気泡はつぶれることなく液中に存在できる。
   ↓
Bそして,この気泡は,周囲の水よりも密度が小さいので,浮力で液面まで上昇し,大気中へ放出されるからである。





<状態図(相図)>
 物質は,低温では粒子間の引力の方が大きいが,圧力一定で温度を上げていくと粒子の熱運動がさかんになり,粒子間の引力を上回るようになる。
  ↓
 つまり,物質は,温度・圧力により,固体・液体・気体のいずれかの状態をとる。
  ↓
 ゆえに,一般的に,温度と圧力の変化によって,物質の状態が変わるとも考えられる。ある温度と圧力で物質がどんな状態になっているのか表した図を状態図三相図)。

 もっとも簡単な「水」の状態を示す。曲線OBを融解曲線,曲線OAを昇華曲線,曲線OCを蒸気圧曲線という。また,点Oを三重点

 20150901161921-0002.jpg

(1) 曲線でくぎられた部分は,気相・液相・固相のいずれかの相を意味する。

(2) 曲線上では,両側にある二つの相が平衡になる。1気圧のもとで水は100℃で沸騰し,水と水蒸気が共存すること。0℃では氷結し,水と氷とが共存することを示す。

(3) 三重点では,三つの相が平衡になる。





<加熱による状態変化>
 粒子の熱運動は加熱により大きくなり状態を変化させるが,
   ↓
状態変化の間は,温度が変わらない。
   ↓
これは,状態変化に熱量が使われる為である(融解熱蒸発熱)。 

 以下に,固体状態の物質を,一定の圧力の下で加熱していくときの物質の状態と温度変化を示す。
 c.jpg

 そして,一般に,融解熱よりも蒸発熱の方がかなり大きい

 これは,融解熱が,固体粒子間に働く結合の一部を切り,粒子間の距離を少し大きくして粒子が動ける空間を作りだすのに必要なエネルギーのことであるが,

 蒸発熱には,液体粒子間に働くすべての結合を切断するためのエネルギーが含まれるからであり,さらにこれに加えて,気体として自由に運動できる空間を確保するため,粒子間に働く引力に逆らって粒子間の距離をさらに大きくするための力学的エネルギーも必要となるからである。

 このとき,吸収された熱エネルギーは,いずれも,分子間の位置エネルギーとして蓄えられることになる。他にも,凝固熱,凝縮熱,昇華熱などがある。


融解熱………固体を融点において,液体にするために要する熱量。

蒸発熱………液体を同温の気体にするために要する熱量。





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2015年08月30日

【理論】酸化還元定義,酸化数,反応式

 酸化還元をマスターするには,
@ 酸化反応,還元反応とは何かを理解します。
A 酸化還元反応を考える為に,酸化数を覚えます。そして,酸化数を用いて反応が酸化反応なのか還元反応なのかを判断できるようにします。
B 酸化還元反応式を書けるようになる為に,半反応式を書けるようにします。そして,それらを組み合わせて酸化還元反応式を書けるようにします。

 ●●● 目次 ●●●
 @ 酸化還元の定義
 A 酸化数
 B 酸化剤・還元剤
 C 半反応式の作り方
 D 酸化剤・還元剤の強さ
 E 酸化還元反応式の作り方
 ●●●●●●●●●●


<酸化還元の定義>
 Cuの粉末を空気中で熱すると,Cuは空気中の酸素と化合してCuOになる。この反応のように,ある物質が酸素と反応したりするとき,その物質は酸化されたという。

 また,熱したCuO に水素を通じると,酸素を奪われて単体のCuになる。この反応のように,酸素の化合物から酸素が奪われたりするときは,その物質は還元されたという。


@ O原子の授受で判断する時

 酸化=O原子をもらう
  2Cu+O2→2CuO
  (Cuは酸化した)
 還元=O原子をはなす
  CuO+H2→Cu+H2O
  (CuOは還元した)

 これは,考えやすい。「酸」素と「化」合する=「酸化」であり,還元とは「逆」という意味なので「もらう」の逆で「はなす」。


A H原子の授受で判断する時

 酸化=H原子をはなす
 還元=H原子をもらう

 これは,O原子とH原子の性質を考えれば分かりやすい。O原子は陰性がつよく,H原子は陽性がつよい。つまり,O原子とH原子は真逆の性質なので@の逆。


B eの授受で判断する時

 酸化=eはなす
 還元=eもらう

 これは,O原子は陰性がつよく陰イオンになりやすく,H原子は陽性がつよく陽イオンになりやすいので,O原子と化合した場合(酸化)にその原子は電子をはなし,H原子と化合した場合(還元)にその原子は電子を受け取りやすいと考えれば良い。

●●●要点!●●●●●●●●●●●●●●
 中和反応はHの授受であり,酸化還元反応はeの授受である。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●


C 酸化数の変化で判断する時

 酸化=酸化数が増加
 還元=酸化数が減少

 これは,電子を取られた場合(酸化)は「マイナス」のものが減るので「増加」の変化をして,電子を受け取った場合(還元)は「マイナス」のものが増えるので「減少」の変化をすると考えられる。





■■■まとめ■■■■■■■■■■■■■■
@ O原子の授受で判断する時
 酸化=O原子をもらう
 還元=O原子をはなす
A H原子の授受で判断する時
 酸化=H原子をはなす
 還元=H原子をもらう
B eの授受で判断する時
 酸化=eはなす
 還元=eもらう
C 酸化数の変化で判断する時
 酸化=酸化数が増加
 還元=酸化数が減少
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■





<酸化数>
 物質の酸化・還元を統一的に理解するには,反応に際して,原子間でどのような電子の授受がおこったのか,つまり電子の数の増減を明らかにすることが必要となる。

 そこで,すべての酸化還元反応に共通して適用できる概念として,物質中の原子やイオンに対して,酸化数という数値が考えられている。

●●●要点!●●●●●●●●●●●●●●
(詳しい酸化数)
 物質が酸素と化合すると,酸素は電気陰性度が強いので,電子を奪われてしまう。つまり,「酸化した」ということは「電子を奪われた」のと同じである。ゆえに,酸化還元反応は,詳しくは,電子の授受である。電子の偏りで判断する。
 酸化数=(本来の価電子数)−(偏り後の電子数)
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●


@ 化合物中のH原子の酸化数=+1
 化合物中のH原子は,価電子が1個で,かつ電気陰性度が小さいので,電子1個を他に取られている事が多く,電荷的には+1。

A 化合物中のO原子の酸化数=−2
 化合物中のO原子は,価電子が6個で,かつ電気陰性度が大きいので,閉殼になるために電子2個を他から取り入れている事が多く,電荷的には−2。

B 化合物の酸化数の総和=0
 化合物内での、授受の数は等しい。総収支は0。

C 単体中の原子の酸化数=0
 同じ原子間では,当然,電気陰性度は同じなので,電子の偏りがない。

D 単原子イオンの酸化数
      =イオンの価数と同じ
 イオン化する事は電子の授受であり,酸化還元も電子の授受である。つまり,同一の変化。

E 多原子イオンの酸化数の総和
      =イオンの価数と同じ
 Dと同様。




■■■まとめ■■■■■■■■■■■■■■
@ 化合物中のH原子の酸化数=+1
A 化合物中のO原子の酸化数=−2 
B 化合物の酸化数の総和=0
C 単体中の原子の酸化数=0
D 単原子イオンの酸化数
      =イオンの価数と同じ
E 多原子イオンの酸化数の総和
      =イオンの価数と同じ
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



上記の@〜Eに基づき酸化数を求める。
■単体■
H2,N2,O2,O3,F2,Cl2などは,Cより0。

■HF■
Hが,@より+1。
Fは,酸化数をxとすれば,H=+1と,Bより総和は0である事から,
 (+1)+x=0
という方程式ができる。ゆえに,x=−1。

■HCl■
Hが,@より+1。
Clは,酸化数をxとすれば,H=+1と,Bより総和は0である事から,
 (+1)+x=0
という方程式ができる。ゆえに,x=−1。

■NaH■
Naが,基本的には+1と考えて良い。
Hは,NaHのときは例外で−1。
ちなみに,これはNaよりもHの方が電気陰性度が大きいので,Hが電子を奪っている。

■H2O■
Hは,@より+1。
Oは,Aより−2。

■H2O2
Hは,@より+1。
Oは,H2O2のときは例外で−1。

■H2S■
Hが,@より+1。
Sは,酸化数をxとすれば,H=+1と,Bより総和は0である事から,
 (+1)×2+x=0
という方程式ができる。ゆえに,x=−2。

■NH3
Hが,@より+1。
Nは,酸化数をxとすれば,H=+1と,Bより総和は0である事から,
 x+(+1)×3=0
という方程式ができる。ゆえに,x=−3。

■NO■
Oは,Aより−2。
Nは,酸化数をxとすれば,O=−2と,Bより総和は0である事から,
 x+(−2)=0
という方程式ができる。ゆえに,x=+2。

■NO2
Oは,Aより−2。
Nは,酸化数をxとすれば,O=−2と,Bより総和は0である事から,
 x+(−2)×2=0
という方程式ができる。ゆえに,x=+4。

■N2O4
Oは,Aより−2。
Nは,酸化数をxとすれば,O=−2と,Bより総和は0である事から,
 x×2+(−2)×4=0
という方程式ができる。ゆえに,x=+4。

■N2O5
Oは,Aより−2。
Nは,酸化数をxとすれば,O=−2と,Bより総和は0である事から,
 x×2+(−2)×5=0
という方程式ができる。ゆえに,x=+5。

■SO2
Oは,Aより−2。
Sは,酸化数をxとすれば,O=−2と,Bより総和は0である事から,
 x+(−2)×2=0
という方程式ができる。ゆえに,x=+4。

■SO3
Oは,Aより−2。
Sは,酸化数をxとすれば,O=−2と,Bより総和は0である事から,
 x+(−2)×3=0
という方程式ができる。ゆえに,x=+6。

■HNO3
Hが,@より+1。
Oは,Aより−2。
Nは,酸化数をxとすれば,H=+1,O=−2と,Bより総和は0である事から,
 (+1)+x+(−2)×3=0
という方程式ができる。ゆえに,x=+5。

■NO3
Oは,Aより−2。
Nは,酸化数をxとすれば,O=−2と,Eより総和は電荷と同じである事から,
 x+(−2)×3=−1
という方程式ができる。ゆえに,x=+5。

■HNO2
Hが,@より+1。
Oは,Aより−2。
Nは,酸化数をxとすれば,H=+1,O=−2と,Bより総和は0である事から,
 (+1)+x+(−2)×2=0
という方程式ができる。ゆえに,x=+3。

■NO2
Oは,Aより−2。
Nは,酸化数をxとすれば,O=−2と,Eより総和は電荷と同じである事から,
 x+(−2)×2=−1
という方程式ができる。ゆえに,x=+3。

■H2SO4
Hが,@より+1。
Oは,Aより−2。
Sは,酸化数をxとすれば,H=+1,O=−2と,Bより総和は0である事から,
 (+1)×2+x+(−2)×4=0
という方程式ができる。ゆえに,x=+6。

■SO42−
Oは,Aより−2。
Sは,酸化数をxとすれば,O=−2と,Eより総和は電荷と同じである事から,
 x+(−2)×4=−2
という方程式ができる。ゆえに,x=+6。

■H2SO3
Hが,@より+1。
Oは,Aより−2。
Sは,酸化数をxとすれば,H=+1,O=−2と,Bより総和は0である事から,
 (+1)×2+x+(−2)×3=0
という方程式ができる。ゆえに,x=+4。

■SO32−
Oは,Aより−2。
Sは,酸化数をxとすれば,O=−2と,Eより総和は電荷と同じである事から,
 x+(−2)×3=−2
という方程式ができる。ゆえに,x=+4。

■KMnO4
Kが,基本的には+1と考えて良い。
Oは,Aより−2。
Mnは,酸化数をxとすれば,K=+1,O=−2と,Bより総和は0である事から,
 (+1)+x+(−2)×4=0
という方程式ができる。ゆえに,x=+7。

■K2Cr2O7
Kが,基本的には+1と考えて良い。
Oは,Aより−2。
Crは,酸化数をxとすれば,K=+1,O=−2と,Bより総和は0である事から,
 (+1)×2+(x)×2+(−2)×7=0
という方程式ができる。ゆえに,x=+6。

■MnO2
Oは,Aより−2。
Mnは,酸化数をxとすれば,O=−2と,Bより総和は0である事から,
 x+(−2)×2=0
という方程式ができる。ゆえに,x=+4。

■H2C2O4
Hが,@より+1。
Oは,Aより−2。
Cは,酸化数をxとすれば,H=+1,O=−2と,Bより総和は0である事から,
 (+1)×2+(x)×2+(−2)×4=0
という方程式ができる。ゆえに,x=+3。

■Na2S2O3
Naが,基本的には+1と考えて良い。
Oは,Aより−2。
Sは,酸化数をxとすれば,H=+1,O=−2と,Bより総和は0である事から,
 (+1)×2+(x)×2+(−2)×3=0
という方程式ができる。ゆえに,x=+2。

■S2O32−
Oは,Aより−2。
Sは,酸化数をxとすれば,O=−2と,Eより総和は電荷と同じである事から,
 (x)×2+(−2)×3=−2
という方程式ができる。ゆえに,x=+2。





<酸化剤・還元剤>
 酸化還元反応において,相手の物質から電子を奪って相手を酸化する(自身は還元反応をする)働きをもつ物質を酸化剤という。

 また,相手の物質に電子を与えて相手を還元する(自身は酸化反応をする)働きをもつ物質を還元剤という。

 ただ,それぞれの反応式をまるまる覚える必要はない。一部分を覚えれば作成できる。(作成方法は下に記す。)


■■■酸化剤■■■ 
過マンガン酸イオン MnO4  
 MnO4+8H+5e → Mn2++4H2O

酸化マンガン(W) MnO2
 MnO2+4H+2e → Mn2++2H2O

二クロム酸イオン Cr2O72−
 Cr2O72−+14H+6e → 2Cr3++7H2O

過酸化水素 H2O2
 H2O2+2H+2e → 2H2O

二酸化硫黄 SO2   
 SO2+4H+4e → S+2H2O

オゾン O3  
 O3+2H+2e → O2+H2O

ハロゲン単体 X2   
 X2+2e → 2X

熱濃硫酸 H2SO4
 H2SO4+2H+2e → SO2+2H2O

希硝酸 HNO3
 HNO3+3H+3e → NO+2H2O

濃硝酸 HNO3
 HNO3+H+e → NO2+H2O


■■■還元剤■■■
シュウ酸 H2C2O4   
 H2C2O4 → 2CO2+2H+2e

硫化水素 H2S
 H2S → S+2H+2e

過酸化水素 H2O2
 H2O2 → O2+2H+2e

二酸化硫黄 SO2
 SO2+2H2O → SO42−+4H+2e

鉄(U)イオン Fe2+
 Fe2+ → Fe3++e

チオ硫酸イオン S2O32−   
 2S2O32− → S4O62−+2e

ハロゲン化物イオン X   
 2X → X2+2e


 ちなみに,過酸化水素 H2O2と二酸化硫黄 SO2は,酸化剤と還元剤の両方の働きが出来る。





<半反応式の作り方>
 酸化剤(or還元剤)の半反応式を丸暗記する必要はない。酸化剤(or還元剤)と,その変化物を覚えれば作れる。

@ 酸化剤(or還元剤)と,その変化物を書く。
 MnO4 → Mn2+

A O原子の数が左右両辺においてそれぞれ等しくなるように,H2Oを入れて調整する。
 MnO4 → Mn2+
  ↓↓↓↓↓
 MnO4 → Mn2++4H2O

B H原子の数が左右両辺においてそれぞれ等しくなるように,Hを入れて調整する。
 MnO4 → Mn2++4H2O
  ↓↓↓↓↓
 MnO4+8H → Mn2++4H2O

C 電荷が左右両辺においてそれぞれ等しくなるように,eを入れて調整する。
 MnO4+8H → Mn2++4H2O
  ↓↓↓↓↓
 MnO4+8H+5e → Mn2++4H2O


上記の@〜Cの手順に沿って半反応式を作成。
■酸化マンガン(W) MnO2
 覚えるもの,MnO2 → Mn2+
@ 覚えたものを書く。
↓ MnO2 → Mn2+
A @ではOが,左辺に2個で右辺に0個なので,H2Oを右辺に2個加える。
↓ MnO2 → Mn2++2H2O
B AではHが,左辺に0個で右辺に4個なので,Hを左辺に4個加える。
↓ MnO2+4H → Mn2++2H2O
C Bでは電荷が,左辺が+4で右辺が+2なので,eを左辺に2個加える。
 MnO2+4H+2e → Mn2++2H2O

■ニクロム酸イオン Cr2O72−
 覚えるもの,Cr2O72− → 2Cr3+
@ 覚えたものを書く。
↓ Cr2O72− → 2Cr3+
A @ではOが,左辺に7個で右辺に0個なので,H2Oを右辺に7個加える。
↓ Cr2O72− → 2Cr3++7H2O
B AではHが,左辺に0個で右辺に14個なので,Hを左辺に14個加える。
↓ Cr2O72−+14H → 2Cr3++7H2O
C Bでは電荷が,左辺が+12で右辺が+6なので,eを左辺に6個加える。
 Cr2O72−+14H+6e → 2Cr3++7H2O

■過酸化水素 H2O2
 覚えるもの,H2O2 → 2H2O
@ 覚えたものを書く。
↓ H2O2 → 2H2O
AはO原子は両辺合っているのでとばして,
B @ではHが,左辺に2個で右辺に4個なので,Hを左辺に2個加える。
↓ H2O2+2H → 2H2O
C Bでは電荷が,左辺が+2で右辺が0なので,eを左辺に2個加える。
 H2O2+2H+2e → 2H2O

■二酸化硫黄 SO2
 覚えるもの,SO2 → S
@ 覚えたものを書く。
↓ SO2 → S
A @ではOが,左辺に2個で右辺に0個なので,H2Oを右辺に2個加える。
↓ SO2 → S+2H2O
B AではHが,左辺に0個で右辺に4個なので,Hを左辺に4個加える。
↓ SO2+4H → S+2H2O
C Bでは電荷が,左辺が+4で右辺が0なので,eを左辺に4個加える。
 SO2+4H+4e → S+2H2O

■オゾン O3
 覚えるもの,O3 → O2
@ 覚えたものを書く。
↓ O3 → O2
A @ではOが,左辺に3個で右辺に2個なので,H2Oを右辺に1個加える。
↓ O3 → O2+H2O
B AではHが,左辺に0個で右辺に2個なので,Hを左辺に2個加える。
↓ O3+2H → O2+H2O
C Bでは電荷が,左辺が+2で右辺が0なので,eを左辺に2個加える。
 O3+2H+2e → O2+H2O

■ハロゲン単体 X2
 覚えるもの,X2 → 2X
@ 覚えたものを書く。
↓ X2 → 2X
ABはとばして
C @では電荷が,左辺が0で右辺が−2なので,eを左辺に2個加える。
 X2+2e → 2X

■熱濃硫酸 H2SO4
 覚えるもの,H2SO4 → SO2
@ 覚えたものを書く。
↓ H2SO4 → SO2
A @ではOが,左辺に4個で右辺に2個なので,H2Oを右辺に2個加える。
↓ H2SO4 → SO2+2H2O
B AではHが,左辺に2個で右辺に4個なので,Hを左辺に2個加える。
↓ H2SO4+2H → SO2+2H2O
C Bでは電荷が,左辺が+2で右辺が0なので,eを左辺に2個加える。
 H2SO4+2H+2e → SO2+2H2O

■希硝酸 HNO3
 覚えるもの,HNO3 → NO
@ 覚えたものを書く。
↓ HNO3 → NO
A @ではOが,左辺に3個で右辺に1個なので,H2Oを右辺に2個加える。
↓ HNO3 → NO+2H2O
B AではHが,左辺に1個で右辺に4個なので,Hを左辺に3個加える。
↓ HNO3+3H → NO+2H2O
C Bでは電荷が,左辺が+3で右辺が0なので,eを左辺に3個加える。
 HNO3+3H+3e → NO+2H2O

■濃硝酸 HNO3
 覚えるもの,HNO3 → NO2
@ 覚えたものを書く。
↓ HNO3 → NO2
A @ではOが,左辺に3個で右辺に2個なので,H2Oを右辺に1個加える。
↓ HNO3 → NO2+H2O
B AではHが,左辺に1個で右辺に2個なので,Hを左辺に1個加える。
↓ HNO3+H → NO2+H2O
C Bでは電荷が,左辺が+1で右辺が0なので,eを左辺に1個加える。
 HNO3+H+e → NO2+H2O

■シュウ酸 H2C2O4
 覚えるもの,H2C2O4 → 2CO2
@ 覚えたものを書く。
↓ H2C2O4 → 2CO2
Aはとばして,
B AではHが,左辺に2個で右辺に0個なので,Hを右辺に2個加える。
↓ H2C2O4 → 2CO2+2H
C Bでは電荷が,左辺が0で右辺が+2なので,eを右辺に2個加える。
 H2C2O4 → 2CO2+2H+2e

■硫化水素 H2S■
 覚えるもの,H2S → S
@ 覚えたものを書く。
↓ H2S → S
Aはとばして,
B @ではHが,左辺に2個で右辺に0個なので,Hを右辺に2個加える。
↓ H2S → S+2H
C Bでは電荷が,左辺が0で右辺が+2なので,eを右辺に2個加える。
 H2S → S+2H+2e

■過酸化水素 H2O2
 覚えるもの,H2O2 → O2
@ 覚えたものを書く。
↓ H2O2 → O2
Aはとばして,
B @ではHが,左辺に2個で右辺に0個なので,Hを右辺に2個加える。
↓ H2O2 → O2+2H
C Bでは電荷が,左辺が0で右辺が+2なので,eを右辺に2個加える。
 H2O2 → O2+2H+2e

■二酸化硫黄 SO2
 覚えるもの,SO2 → SO42−
@ 覚えたものを書く。
↓ SO2 → SO42−
A @ではOが,左辺に2個で右辺に4個なので,H2Oを左辺に2個加える。
↓ SO2+2H2O → SO42−
B AではHが,左辺に4個で右辺に0個なので,Hを右辺に4個加える。
↓ SO2+2H2O → SO42−+4H
C Bでは電荷が,左辺が0で右辺が+2なので,eを右辺に2個加える。
 SO2+2H2O → SO42−+4H+2e

■鉄(U)イオン Fe2+
 覚えるもの,Fe2+ → Fe3+
@ 覚えたものを書く。
↓ Fe2+ → Fe3+
ABはとばして,
C @では電荷が,左辺が+2で右辺が+3なので,eを右辺に1個加える。
 Fe2+ → Fe3++e

■チオ硫酸イオン S2O32−
 覚えるもの,2S2O32− → S4O62−
@ 覚えたものを書く。
↓ 2S2O32− → S4O62−
ABはとばして,
C @では電荷が,左辺が−4で右辺が−2なので,eを右辺に2個加える。
 2S2O32− → S4O62−+2e

■ハロゲン化物イオン X
 覚えるもの,2X → X2
@ 覚えたものを書く。
↓ 2X → X2
ABはとばして,
C @では電荷が,左辺が−2で右辺が0なので,eを右辺に2個加える。
 2X → X2+2e





<酸化剤・還元剤の強さ>
 還元剤(右に進む反応)の強さは,上ほど強い。また,酸化剤(左に進む反応)の強さは,下ほど強い。

 Li ⇄ Li+e
 K ⇄ K+e
 Ba ⇄ Ba2++2e
 Sr ⇄ Sr2++2e
 Ca ⇄ Ca2++2e
 Na ⇄ Na+e
 Mg ⇄ Mg2++2e
 Al ⇄ Al3++3e
 Zn ⇄ Zn2++2e
 (COOH)2 ⇄ 2CO2+2H+2e
 Fe ⇄ Fe2++2e
 Pb+SO42− ⇄ PbSO4+2e
 Ni ⇄ Ni2++2e
 Sn ⇄ Sn2++2e
 Pb ⇄ Pb2++2e
 H2 ⇄ 2H+2e
 2S2O32− ⇄ S4O62−+2e
 H2S ⇄ S+2H+2e
 Sn2+ ⇄ Sn4++2e
 SO2+2H2O ⇄ SO42−+4H+2e
 Cu ⇄ Cu2++2e
 4OH ⇄ O2+2H2O+4e
 2I ⇄ I2+2e
 MnO2+4OH ⇄ MnO4+2H2O+3e
 H2O2 ⇄ O2+2H+2e
 Fe2+ ⇄ Fe3++e
 2Hg ⇄ Hg22++2e
 NO2+H2O ⇄ NO3+2H+e
 Cl+2OH ⇄ ClO+H2O+2e
 NO+2H2O ⇄ NO3+4H+3e
 2Br ⇄ Br2+2e
 Mn2++2H2O ⇄ MnO2+4H+2e
 2Cr2++7H2O ⇄ Cr2O72−+14H+6e
 2Cl ⇄ Cl2+2e
 Mn2++4H2O ⇄ MnO4+8H+5e
 Cl2+2H2O ⇄ 2HClO+2H+2e
 PbSO4+2H2O⇄PbO2+SO42−+4H+2e
 2H2O ⇄ H2O2+2H+2e
 O2+H2O ⇄ O3+2H+2e
 2F ⇄ F2+2e





<酸化還元反応式の作り方>
 酸化還元反応式は,酸化剤および還元剤のそれぞれ単独の電子の半反応式を合わせることでできる。

 還元剤から放出された電子が単独で遊離した状態は想定されず,還元剤が電子を放出すると同時に酸化剤がこの電子を受け取る。すなわち,酸化と還元は必ず同時に起こる。

 酸化剤+e → 還元生成物…@
 還元剤 → 酸化生成物+e…A

 @+A
  酸化剤+還元剤 → 酸化還元生成物

 一般に,酸化剤には酸化された状態にある元素が含まれ,逆に還元剤には還元された状態にある元素が含まれている。ゆえに,それらの元素が個々の安定な酸化数となるように,酸化剤と還元剤の間で電子の授受が行われる。


■硫酸酸性過マンガン酸カリウムと硫酸鉄(U)との反応■
@ 酸化剤を記す。
 MnO4+8H+5e → Mn2++4H2O
A 還元剤を記す。
 Fe2+ → Fe3++e
B eに着目して,両式を合わせる。
 @+A×5
 MnO4+8H+5e → Mn2++4H2O
        +
 5Fe2+ → 5Fe3++5e
        ↓
 MnO4+8H+5Fe2+
     → Mn2++4H2O+5Fe3+
C 足りないものを補い,反応式を作成する。
 問われているのは,硫酸酸性過マンガン酸カリウムと硫酸鉄(U)との反応なので,KMnO4とH2SO4とFeSO4の反応式を記す。ゆえに,
 MnO4→KMnO4(Kを補う)
 H→H2SO4(SO42−を補う)
 Fe2+→FeSO4(SO42−を補う)

MnO4+8H+5Fe2+
     +K+4SO42−+5SO42−
 → Mn2++4H2O+5Fe3+
     +K+4SO42−+5SO42−
        ↓
補ったものを用いて,KMnO4とH2SO4とFeSO4の反応式にする。右辺は+と−のものを合わせる。
KMnO4+4H2SO4+5FeSO4
→ MnSO4+1/2K2SO4+4H2O+5/2Fe2(SO4)3
        ↓
係数が分数(1/2)になっているものがあるので,両辺を2倍する。
2KMnO4+8H2SO4+10FeSO4
 → 2MnSO4+K2SO4+8H2O+5Fe2(SO4)3

■硫酸酸性過マンガン酸カリウムとシュウ酸との反応■
@ 酸化剤を記す。
 MnO4+8H+5e → Mn2++4H2O
A 還元剤を記す。
 H2C2O4 → 2CO2+2H+2e
B eに着目して,両式を合わせる。
 @×2+A×5
 2MnO4+16H+10e → 2Mn2++8H2O
        +
 5H2C2O4 → 10CO2+10H+10e
        ↓
 2MnO4+6H+5H2C2O4
     → 2Mn2++8H2O+10CO2
C 足りないものを補い,反応式を作成する。
 問われているのは,硫酸酸性過マンガン酸カリウムとシュウ酸との反応なので,KMnO4とH2SO4とH2C2O4の反応式を記す。ゆえに,
2MnO4+6H+5H2C2O4+2K+3SO42−
→ 2Mn2++8H2O+10CO2+2K+3SO42−
        ↓
2KMnO4+3H2SO4+5H2C2O4
   → 2MnSO4+8H2O+10CO2+K2SO4





<過マンガン酸カリウム滴定>
 過マンガン酸カリウム水溶液を用いる滴定である。
過マンガン酸イオンは酸化剤であり,酸性水溶液中では還元剤と次のように反応する。
  MnO4+8H+5e → Mn2++4H2O
水溶液中でMnO4は赤紫色を示し,Mn2+はほとんど無色であるから,水溶液の色の変化によって終点がわかる。普通,ビュレットから過マンガン酸カリウム水溶液を滴下していくので,還元剤が残っているうちは滴下したMnO4の色が消えるが,還元剤がすべて酸化されると滴下したMnO4の色が消えずに残る。したがって,MnO4の赤紫色が消えなくなり,水溶液がわずかに赤紫色に着色した点を滴定の終点とする。





 質問等がありましたら,ご遠慮なくどうぞ。
 「コメント」欄に,ご記入頂ければ,手軽に済むと思います。宜しくお願い致します。





p.s. 
 おかげさまで,理論,有機,無機やpoint,Q&Aなど内容が多種類になってまいりました。ゆえに,皆さんにより良く活用頂きたいと思います。
 pointとしては,「カテゴリ」の活用です。
 大変申し訳ありませんが,投稿がバラバラですので,分野ごとにご覧頂けると幸いです。

posted by アボガドロ at 01:31 | Comment(2) | TrackBack(0) | 理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年08月02日

【理論】酸塩基(2)

<中和反応>
 一般的に「酸」と「塩基」が反応すると「塩」と「水」が生成する。この反応を中和反応

20150803120508-00011.jpg


●水●
 酸のHと塩基のOHから生じる。

●塩●
 酸から生じる陰イオン(Hが外れた残り)と塩基から生じる陽イオン(OHが外れた残り)が結合して生じる。ただし,水溶液中なので結合しないで陰イオンと陽イオンのままで存在するものも多い。
 ちなみに,塩は(陽イオン+陰イオン)の順で記し,名称は(陰イオン+陽イオン)の順番になる。


(1価同士)
@ HX → H+X…酸の電離
A YOH → Y+OH…塩基の電離
@+A
 HX+YOH → YX+H2O
(例)
 HCl+NaOH → NaCl+H2O
 HCl+KOH → KCl+H2O
 HNO3+NaOH → NaNO3+H2O
 HNO3+KOH → KNO3+H2O
 CH3COOH+NaOH → CH3COONa+H2O
 CH3COOH+KOH → CH3COOK+H2O


(2価同士)
@ H2X → 2H+X2−…酸
A Y(OH)2 → Y2++2OH…塩基
@+A
 H2X+Y(OH)2 → YX+2H2O
(例)
 H2SO4+Ca(OH)2 → CaSO4+2H2O
 H2SO4+Mg(OH)2 → MgSO4+2H2O
 H2SO3+Ca(OH)2 → CaSO3+2H2O
 H2SO3+Mg(OH)2 → MgSO3+2H2O
 H2CO3+Ca(OH)2 → CaCO3+2H2O
 H2CO3+Mg(OH)2 → MgCO3+2H2O


(2価の酸と1価の塩基)
@ H2X → 2H+X2−…酸
A YOH → Y+OH…塩基
@+A×2
 H2X+2YOH → Y2X+2H2O
(例)
 H2SO4+2NaOH → Na2SO4+2H2O
 H2SO4+2KOH → K2SO4+2H2O
 H2CO3+2NaOH → Na2CO3+2H2O
 H2CO3+2KOH → K2CO3+2H2O


(1価の酸と2価の塩基)
@ HX → H+X…酸
A Y(OH)2 → Y2++2OH…塩基
@×2+A
 2HX+Y(OH)2 → YX2+2H2O
(例)
 2HCl+Ca(OH)2 → CaCl2+2H2O
 2HCl+Mg(OH)2 → MgCl2+2H2O
 2HNO3+Ca(OH)2 → Ca(NO3)2+2H2O
 2HNO3+Mg(OH)2 → Mg(NO3)2+2H2O


(3価の酸と1価の塩基)
@ H3X → 3H+X3−…酸
A YOH → Y+OH…塩基
@+A×3
 H3X+3YOH → Y3X+3H2O
(例)
 H3PO4+3NaOH → Na3PO4+3H2O


(1価の酸と3価の塩基)
@ HX → H+X…酸
A Y(OH)3 → Y3++3OH…塩基
@×3+A
 3HX+Y(OH)3 → YX3+3H2O
(例)
 3HCl+Al(OH)3 → AlCl3+3H2O
 3HCl+Fe(OH)3 → FeCl3+3H2O


(3価の酸と2価の塩基)
@ H3X → 3H+X3−…酸
A Y(OH)2 → Y2++2OH…塩基
@×2+A×3
 2H3X+3Y(OH)2 → Y3X2+6H2O
(例)
 2H3PO4+3Ca(OH)2 → Ca3(PO4)2+6H2O


(2価の酸と3価の塩基)
@ H2X → 2H+X2−…酸
A Y(OH)3 → Y3++3OH…塩基
@×3+A×2
 3H2X+2Y(OH)3 → Y2X3+6H2O
(例)
 3H2SO4+2Al(OH)3 → Al2(SO4)3+6H2O


(3価の酸と3価の塩基)
@ H3X → 3H+X3−…酸
A Y(OH)3 → Y3++3OH…塩基
@+A
 H3X+Y(OH)3 → YX+3H2O
(例)
 H3PO4+Al(OH)3 → AlPO4+3H2O
 H3PO4+Fe(OH)3 → FePO4+3H2O





補足(中和反応の作り方)
 H2SO4+NaOH→…
@ 酸・塩基のそれぞれの価数をみて,HとOHの数を合わせるように係数をつける。
 1H2SO42NaOH→…
 (2価)   (1価)
A H2Oを作る。
 1H2SO4+2NaOH→2H2O+…
B 残りで塩を作り完成。
 1H2SO4+2NaOH→2H2O+Na2SO4





<塩の分類>
 酸または塩基が2価以上の場合,電離の各段階に応じて2種類以上の塩ができることがある。
 たとえば,2価の酸である硫酸を1価の塩基である水酸化ナトリウム水溶液で中和する場合,加える塩基の量によって次の2通りの反応がおこる。

 H2SO4+NaOH → NaHSO4+H2O…@
 H2SO4+2NaOH → Na2SO4+2H2O…A

(1) A式の反応で生じたNa2SO4は,H2SO4のH2個がすべてNaと置き換わっているので正塩である。

(2) @式の反応で生じたNaHSO4は,H2SO4のH1個だけがNaと置き換わっているだけである。このように,化学式中に酸のHが残っている塩を酸性塩という。

(すなわち,硫酸の第1電離で生じた塩がNaHSO4で,第2電離で生じた塩がNa2SO4である。酸性塩は,多価の酸が塩基によって不完全に中和されたときに生成する塩であり,一方,正塩は,酸を塩基で完全に中和したときに生成する塩である。)

(3) 同様に,とくに水に溶けにくい多価の塩基を酸で不完全に中和した場合には,多価の塩基中に含まれるOHの一部を他の陰イオンで置き換えたMgCl(OH)のような塩が生成することがある。このように,化学式中に塩基のOHが残っている塩を塩基性塩という。
  Mg(OH)2+HCl → MgCl(OH)+H2O

 正塩(中性塩),酸性塩,塩基性塩は,塩の組成を区別するための形式的な分類法であって,それぞれの塩の水溶液の性質が必ずしも中性,酸性,塩基性を示すわけではないことに注意。


●正塩●   
 酸のHも塩基のOHも残っていない塩。
 Na2SO4,Al2(SO4)3,K2SO4,CaSO4
 BaSO4,PbSO4,ZnSO4,FeSO4
 CuSO4,(NH4)2SO4,Na2SO3
 NaNO3,KNO3,AgNO3,NaNO2,KNO2
 NaCl,MgCl2,AlCl3,KCl,
 NH4Cl,BaCl2,AgCl,FeCl3,PbCl2
 Na2CO3,CaCO3
 CH3COONa,CH3COOK,(CH3COO)2Mg,
 (CH3COO)2Ca,
 Na2C2O4,CaC2O4,Na3PO4など


●酸性塩●
 酸のHが残っている塩。
 NaHSO4,KHSO4,NaHSO3
 NaHCO3,KHCO3,Ca(HCO3)2
 NaHC2O4,NaH2PO4,Na2HPO4など


●塩基性塩●
 塩基のOHが残っている塩。
 MgCl(OH),CuCl(OH)など





<塩の名称>
 名称は,(陰イオン+陽イオン)の順番。

●硫酸塩と硫酸水素塩●
(H2SO4=硫酸)
 Na2SO4(硫酸ナトリウム)
 Al2(SO4)3(硫酸アルミニウム)
 K2SO4(硫酸カリウム)
 CaSO4(硫酸カルシウム)
 BaSO4(硫酸バリウム)
 PbSO4(硫酸鉛(U))
 ZnSO4(硫酸亜鉛)
 FeSO4(硫酸鉄(U))
 CuSO4(硫酸銅(U))
 (NH4)2SO4(硫酸アンモニウム)
 NaHSO4(硫酸水素ナトリウム)
 KHSO4(硫酸水素カリウム)


●亜硫酸塩と亜硫酸水素塩●
(H2SO3=亜硫酸)
 Na2SO3(亜硫酸ナトリウム)
 NaHSO3(亜硫酸水素ナトリウム)


●硝酸塩●
(HNO3=硝酸)
 NaNO3(硝酸ナトリウム)
 KNO3(硝酸カリウム)
 AgNO3(硝酸銀)


●亜硝酸塩●
(HNO2=亜硝酸)
 NaNO2(亜硝酸ナトリウム)
 KNO2(亜硝酸カリウム)


●塩化物●
(HCl=塩酸)
 NaCl(塩化ナトリウム)
 MgCl2(塩化マグネシウム)
 AlCl3(塩化アルミニウム)
 KCl(塩化カリウム)
 NH4Cl(塩化アンモニウム)
 BaCl2(塩化バリウム)
 AgCl2(塩化銀)
 FeCl3(塩化鉄(V))
 PbCl2(塩化鉛(U))


●炭酸塩と炭酸水素塩●
(H2CO3=炭酸)
 Na2CO3(炭酸ナトリウム)
 CaCO3(炭酸カルシウム)
 NaHCO3(炭酸水素ナトリウム)
 KHCO3(炭酸水素カリウム)
 Ca(HCO3)2(炭酸水素カルシウム)


●酢酸塩●
(CH3COOH=酢酸)
 CH3COONa(酢酸ナトリウム)
 CH3COOK(酢酸カリウム)
 (CH3COO)2Mg(酢酸マグネシウム)
 (CH3COO)2Ca(酢酸カルシウム)


●シュウ酸塩とシュウ酸水素塩●
(H2C2O4=シュウ酸)
 Na2C2O4(シュウ酸ナトリウム)
 NaHC2O4(シュウ酸水素ナトリウム)
 CaC2O4(シュウ酸カルシウム)


●リン酸塩など●
(H3PO4=リン酸)
 Na3PO4(リン酸ナトリウム)
 NaH2PO4(リン酸二水素ナトリウム)
 Na2HPO4(リン酸一水素ナトリウム)


●その他●
 MgCl(OH)(塩化水酸化マグネシウム)
 CuCl(OH)(塩化水酸化カルシウム)



<塩の液性>
 化学式中に酸のHも塩基のOHも全く残っていない正塩を水に溶かすと,その水溶液は中性になると予想される。しかし,実際には正塩を水に溶かしたとき,その水溶液が酸性や塩基性を示すことがある。
 これは,塩を構成するイオンの一部が水と反応して,もとの酸や塩基に戻ってしまうためである。このような現象を塩の加水分解といい,この結果として塩の水溶液が酸性や塩基性を示すようになる。

 これを,簡単に判断するには,もともとの酸塩基の強弱で考えればよい

@
酸+塩基からなる正塩は,酸性
酸+塩基からなる酸性塩は,酸性
酸+塩基からなる塩基塩は,酸性

A
酸+塩基からなる正塩は,塩基性
酸+塩基からなる酸性塩は,塩基性
酸+塩基からなる塩基塩は,塩基性

B
酸+塩基からなる正塩は,中性
酸+塩基からなる正塩は,中性
ただし,酸+塩基からなる酸性塩は,酸性
ただし,酸+塩基からなる塩基性塩は,塩基性


●Na2SO4
 H2SO4強酸とNaOH強塩基から生じた塩と考えられるので,中性

●Al2(SO4)3
 H2SO4強酸とAl(OH)3弱塩基から生じた塩と考えられるので,酸性

●K2SO4
 H2SO4強酸とKOH強塩基から生じた塩と考えられるので,中性

●CaSO4
 H2SO4強酸とCa(OH)2強塩基から生じた塩と考えられるので,中性

●BaSO4
 H2SO4強酸とBa(OH)2強塩基から生じた塩と考えられるので,中性

●PbSO4
 H2SO4強酸とPb(OH)2弱塩基から生じた塩と考えられるので,酸性

●ZnSO4
 H2SO4強酸とZn(OH)2弱塩基から生じた塩と考えられるので,酸性

●FeSO4
 H2SO4強酸とFe(OH)2弱塩基から生じた塩と考えられるので,酸性

●CuSO4
 H2SO4強酸とCu(OH)2弱塩基から生じた塩と考えられるので,酸性

●(NH4)2SO4
 H2SO4強酸とNH3弱塩基から生じた塩と考えられるので,酸性

●Na2SO3
 H2SO3弱酸とNaOH強塩基から生じた塩と考えられるので,塩基性

●NaNO3
 HNO3強酸とNaOH強塩基から生じた塩と考えられるので,中性

●KNO3
 HNO3強酸とKaOH強塩基から生じた塩と考えられるので,中性

●AgNO3
 HNO3強酸とAgOH弱塩基から生じた塩と考えられるので,酸性

●NaNO2
 HNO2弱酸とNaOH強塩基から生じた塩と考えられるので,塩基性

●KNO2
 HNO2弱酸とKOH強塩基から生じた塩と考えられるので,塩基性

●NaCl●
 HCl強酸とNaOH強塩基から生じた塩と考えられるので,中性

●MgCl2
 HCl強酸とMg(OH)2弱塩基から生じた塩と考えられるので,酸性

●AlCl3
 HCl強酸とAl(OH)3弱塩基から生じた塩と考えられるので,酸性

●KCl●
 HCl強酸とKOH強塩基から生じた塩と考えられるので,中性

●NH4Cl●
 HCl強酸とNH3弱塩基から生じた塩と考えられるので,酸性

●BaCl2
 HCl強酸とBa(OH)2強塩基から生じた塩と考えられるので,中性

●AgCl●
 HCl強酸とAgOH弱塩基から生じた塩と考えられるので,酸性

●FeCl3
 HCl強酸とFe(OH)3弱塩基から生じた塩と考えられるので,酸性

●PbCl2
 HCl強酸とPb(OH)2弱塩基から生じた塩と考えられるので,酸性

●Na2CO3
 H2CO3弱酸とNaOH強塩基から生じた塩と考えられるので,塩基性

●CaCO3
 H2CO3弱酸とCa(OH)2強塩基から生じた塩と考えられるので,塩基性

●CH3COONa●
 CH3COOH弱酸とNaOH強塩基から生じた塩と考えられるので,塩基性

●CH3COOK●
 CH3COOH弱酸とKOH強塩基から生じた塩と考えられるので,塩基性

●(CH3COO)2Mg●
 CH3COOH弱酸とMg(OH)2弱塩基から生じた塩と考えられるので,中性

●(CH3COO)2Ca●
 CH3COOH弱酸とCa(OH)2強塩基から生じた塩と考えられるので,塩基性

●Na2C2O4
 H2C2O4弱酸とNaOH強塩基から生じた塩と考えられるので,塩基性

●CaC2O4
 H2C2O4弱酸とCa(OH)2強塩基から生じた塩と考えられるので,塩基性

●Na3PO4
 H3PO4弱酸とNaOH弱塩基から生じた塩と考えられるので,中性

●NaHSO4
 H2SO4強酸とNaOH強塩基から生じた塩と考えられるので,酸性塩なので酸性

●KHSO4
 H2SO4強酸とKOH強塩基から生じた塩と考えられるので,酸性塩なので酸性

●NaHSO3
 H2SO3弱酸とKOH強塩基から生じた塩と考えられるので,酸性塩でも塩基性

●NaHCO3
 H2CO3弱酸とNOH強塩基から生じた塩と考えられるので,酸性塩でも塩基性

●KHCO3
 H2CO3弱酸とKOH強塩基から生じた塩と考えられるので,酸性塩でも塩基性

●Ca(HCO3)2
 H2CO3弱酸とCa(OH)2強塩基から生じた塩と考えられるので,酸性塩でも塩基性

●NaHC2O4
 H2C2O4弱酸とNaOH強塩基から生じた塩と考えられるので,酸性塩でも塩基性

●MgCl(OH)●
 HCl強酸とMg(OH)2弱塩基から生じた塩と考えられるので,塩基性塩でも酸性

●CuCl(OH)●
 HCl強酸とCu(OH)2弱塩基から生じた塩と考えられるので,塩基性塩でも酸性





<実験器具>
 濃度のわからない溶液の濃度をすでに濃度のわかっている溶液を用いて決める操作を滴定という。滴定に用いる器具は,

@ 溶液を少しずつ滴下するには,ビュレット
 20150730123013-00021.jpg
 洗浄後に水で濡れている場合は,共洗いする。
 ちなみに,水で濡れたままだと,ビュレットに入れた溶液が薄くなってしまう。ゆえに,滴下した一滴あたりに含まれる物質量が減り,中和に必要な滴下量が適量より多くなってしまう。
 ビュレットに入れた時の濃度を前提にするため,不適切に増加してしまった滴下量から,過剰に塩基が含まれるという結果になってしまう。

A 溶液をとるには,ホールピペット
 ホールピペットの標線の少し上まで吸いあげる。吸口を指で押さえながら視線を標線に合わせて少しずつ液面を下げて一致させる。
 ホールピペットの先端をコニカルビーカーに深く入れ,指をはなして溶液を流し入れる。先端に残った溶液は再び吸口を指で押さえたのち,太い部分を手のひらで握ってあたためることでビーカーに移す。
   20150730123013-00023.jpg
 洗浄後に水で濡れている場合は,共洗いする。


B 溶液を調製するときは,メスフラスコ
 1L(1kg)の水に100gの溶質を溶かせば質量は1100gとなることは明らかであるが,体積がどうなるかは全く予測できない。(溶媒に溶質を加えると,その組み合わせにより,体積が変わらなかったり,増えたり,減ったりする。)
 ゆえに,専用の器具であるメスフラスコで,溶質と少量の溶媒をいれて溶解させた後,溶媒を追加して体積を調整する。
 20150730123013-00022.jpg
 洗浄後に水で濡れている場合でも,そのまま使用できる。






<pH指示薬>
 滴定において終点を見極めるにはpH指示薬を用いる。

 水溶液のpHの変化によって変色する指示薬は,多くの場合,それ自身が弱い酸または塩基であり,色が変化するのはpHすなわち水素イオン濃度の変化によって分子の構造が変化するからである。指示薬の色調の変化する範囲を指示薬の変色域という。
 
 中和点が酸性(生じる塩が酸性)
  酸性の指示薬を用いる。
 中和点が塩基性(生じる塩が塩基性)
  塩基性の指示薬を用いる。

 ●メチルオレンジ● 酸性の指示薬
 (変色域3.1〜4.4)

 ●フェノールフタレイン● 塩基性の指示薬
 (変色域8.0〜9.8)

 ●メチルレッド● 酸性の指示薬
 (変色域4.2〜6.3)

 ●BTB(ブロモチモールブルー)●
 (変色域6.0〜7.6)





<滴定曲線>
 酸(または塩基)を塩基(または酸)で滴定したときの,加えた塩基(または酸)水溶液の体積とpHとの関係記した曲線を滴定曲線という。

 問われる時は,大まかな判断で良いので,酸と塩基の強弱で考える。

@強酸+強塩基
 強酸が入っているので酸性のところの「下のほう」から始まり,強塩基を加えているので,塩基性のところの「上のほう」で終わる。
 滴定曲線1.jpg

A強酸+弱塩基
 強酸が入っているので「下のほう」から始まり,弱塩基を加えているので,「真ん中のほう」で終わる。
 滴定曲線3.jpg

B弱酸+強塩基
 弱酸が入っているので「真ん中のほう」から始まり,強塩基を加えているので,「上のほう」で終わる。
 滴定曲線2.jpg

C弱酸+弱塩基
 弱酸が入っているので「真ん中のほう」から始まり,弱塩基を加えているので,「真ん中のほう」で終わる。
 滴定曲線4.jpg





 質問等がありましたら,ご遠慮なくどうぞ。
 「コメント」欄に,ご記入頂ければ,手軽に済むと思います。宜しくお願い致します。





p.s. 
 おかげさまで,理論,有機,無機やpoint,Q&Aなど内容が多種類になってまいりました。ゆえに,皆さんにより良く活用頂きたいと思います。
 pointとしては,「カテゴリ」の活用です。
 大変申し訳ありませんが,投稿がバラバラですので,分野ごとにご覧頂けると幸いです。

posted by アボガドロ at 02:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | 理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年06月29日

【理論】酸塩基(1)

<酸塩基の定義>
 塩化水素の水溶液(塩酸)や,酢酸・硫酸などのような物質の水溶液は,すっぱい味をもち,青色リトマス紙を赤くする。このような性質を酸性という。

■■■酸性■■■
 胃液,レモン果汁,食酢,炭酸水,雨水,牛乳


 また,水酸化ナトリウムの水溶液や水酸化カルシウムの水溶液は,赤色リトマス紙を青くしたり,酸の水溶液を中和して塩を生成する。このような性質を塩基性という。(水に溶ける塩基をアルカリとよぶ場合があるが,高校化学では基本的には塩基)

■■■塩基性■■■
 血液,涙,木灰(きばい)の水溶液

補足(灰の性質)
 生物を焼却すると,主成分である炭素,水素は二酸化炭素や水蒸気などの気体になる。しかし,微量に含まれているカリウム,カルシウム,マグネシウムなどは燃焼しても気体にはならずに残るので,灰は塩基性となる。


 高校化学では,以下の2つの定義が出てくる。


@アレニウスの定義
(放出するイオンの違いに基づく定義)

・酸:H放出する物質
  (例) HCl→H+Cl
・塩基:OH放出する物質
  (例) NaOH→Na+OH


Aブレンステッド・ローリーの定義
(水素イオンの授受に基づく定義)

・酸:H放出する物質
・塩基:H受け取る物質
  (例) NH3+H→NH4


 アレニウスの定義では,OHをもたないアンモニアが実質的に塩基性を示すことの十分な説明ができない。

 しかし,ブレンステッドの定義では,OHをもたないものや,水以外を溶媒とする溶液や気相中での反応にも適応できる。ブレンステッドの定義にてアンモニアは,NH3+H→NH4と働き,塩基である。

 ゆえに,基本的にはブレンステッドの定義で考える。(簡単なものでアレニウスの定義で判断出来れば構わないが…)


◆HCl+H2O → Cl+H3O
・HClはHを放出してClになっているので,酸。
・H2OはHを受け取りH3Oになっているので,塩基。

◆H2SO4+H2O → HSO4+H3O
・H2SO4はHを放出してHSO4になっているので,酸。
・H2OはHを受け取りH3Oになっているので,塩基。

◆HSO4+H2O → SO42−+H3O
・HSO4はHを放出してSO42−になっているので,酸。
・H2OはHを受け取りH3Oになっているので,塩基。

◆H2SO3+H2O → HSO3+H3O
・H2SO3はHを放出してHSO3になっているので,酸。
・H2OはHを受け取りH3Oになっているので,塩基。

◆HSO3+H2O → SO32−+H3O
・HSO3はHを放出してSO32−になっているので,酸。
・H2OはHを受け取りH3Oになっているので,塩基。

◆HNO3+H2O → NO3+H3O
・HNO3はHを放出してNO3になっているので,酸。
・H2OはHを受け取りH3Oになっているので,塩基。

◆HNO2+H2O → NO2+H3O
・HNO2はHを放出してNO2になっているので,酸。
・H2OはHを受け取りH3Oになっているので,塩基。

◆H2CO3+H2O → HCO3+H3O
・H2CO3はHを放出してHCO3になっているので,酸。
・H2OはHを受け取りH3Oになっているので,塩基。

◆HCO3+H2O → CO32−+H3O
・HCO3はHを放出してCO32−になっているので,酸。
・H2OはHを受け取りH3Oになっているので,塩基。

◆CH3COOH+H2O → CH3COO+H3O
・CH3COOHはHを放出してCH3COOになっているので,酸。
・H2OはHを受け取りH3Oになっているので,塩基。

◆HClO3+H2O → ClO3+H3O
・HClO3はHを放出してClO3になっているので,酸。
・H2OはHを受け取りH3Oになっているので,塩基。

◆HClO4+H2O → ClO4+H3O
・HClO4はHを放出してClO4になっているので,酸。
・H2OはHを受け取りH3Oになっているので,塩基。

◆HClO2+H2O → ClO2+H3O
・HClO2はHを放出してClO2になっているので,酸。
・H2OはHを受け取りH3Oになっているので,塩基。

◆HClO+H2O → ClO+H3O
・HClOはHを放出してClOになっているので,酸。
・H2OはHを受け取りH3Oになっているので,塩基。

◆NH4+H2O → NH3+H3O
・NH4はHを放出してNH3になっているので,酸。
・H2OはHを受け取りH3Oになっているので,塩基

◆CO32−+H2O → HCO3+OH
・H2OはHを放出してOHになっているので,酸。
・CO32−はHを受け取りHCO3になっているので,塩基。

◆HCO3+H2O → H2O+CO2+OH
・H2OはHを放出してOHになっているので,酸。
・HCO3はHを受け取りH2O+CO2になっているので,塩基。
(H2CO3は分解してH2O+CO2になる)

◆NH3+H2O → NH4+OH
・H2OはHを放出してOHになっているので,酸。
・NH3はHを受け取りNH4になっているので,塩基。

◆CH3COO+H2O → CH3COOH+OH
・H2OはHを放出してOHになっているので,酸。
・CH3COOはHを受け取りCH3COOHになっているので,塩基。

◆Na2CO3+HCl → NaHCO3+NaCl◆
・HClはHを放出して(Naを受け取り)NaClになっているので,酸。
・Na2CO3は(Naを放出して)Hを受け取りNaHCO3になっているので,塩基。

◆NaHCO3+HCl → H2O+CO2+NaCl◆
・HClはHを放出して(Naを受け取り)NaClになっているので,酸。
・NaHCO3は(Naを放出して)Hを受け取りH2O+CO2になっているので,塩基。

◆Na2CO3+2HCl → H2O+CO2+2NaCl◆
・HClはHを放出して(Naを受け取り)NaClになっているので,酸。
・Na2CO3は(Naを放出して)Hを受け取りH2O+CO2になっているので,塩基。





<酸塩基の例と電離式>
■酸■(主に○○酸)溶質の化学式のみを記す
・H2SO4=硫酸,H2SO3=亜硫酸
・HNO3=硝酸,HNO2=亜硝酸
・HCl=塩酸(塩化水素酸),HF=フッ化水素酸,HBr=臭化水素酸,HI=ヨウ化水素酸
・H2CO3=炭酸
・CH3COOH=酢酸,H2C2O4=シュウ酸
・H3PO4=リン酸
・H2S=硫化水素
・HCN=シアン化水素
・HClO3=塩素酸,HClO4=過塩素酸,HClO2=亜塩素酸,HClO=次亜塩素酸
・H3BO3=ホウ酸
・フェノール類(有機物:フェノールなど)
・カルボン酸(有機物:酢酸,シュウ酸,ギ酸,プロピオン酸など)
・スルホン酸(有機物:ベンゼンスルホン酸など)

※ 亜○○酸=基本の酸に比べOが1個少ないバージョン。H2SO3=亜硫酸,HNO2=亜硝酸,亜塩素酸=HClO2が有名。

※ 次亜○○酸=基本の酸に比べOが2個少ないバージョン。次亜塩素酸=HClOが有名。

※ 過○○酸=基本の酸に比べOが1個多いバージョン。過塩素酸=HClO4が有名。

(Hn○○→nH+○○n−
 H2SO4→2H+SO42−
 H2SO3→2H+SO32−
 HNO3→H+NO3
 HNO2→H+NO2
 HCl→H+Cl
 HF→H+F
 HBr→H+Br
 HI→H+I
 H2CO3→2H+CO32−
 CH3COOH→H+CH3COO
 H2C2O4→2H+C2O42−
 H3PO4→3H+PO43−
 HClO3→H+ClO3
 HClO4→H+ClO4
 HClO2→H+ClO2
 HClO→H+ClO
(完全電離を記す)


■塩基■(主に水酸化○○)
・NaOH=水酸化ナトリウム,KOH=水酸化カリウム,LiOH=水酸化リチウム,Ca(OH)2=水酸化カルシウム,Ba(OH)2=水酸化バリウム,Mg(OH)2=水酸化マグネシウム,Al(OH)3=水酸化アルミニウム,
・Fe(OH)2=水酸化鉄(U),Fe(OH)3=水酸化鉄(V),Cu(OH)2=水酸化銅(U)
・NH3=アンモニア
・アミン(有機物:アニリンなど)

(○○(OH)n→○○n++nOH
 NaOH→Na+OH
 KOH→K+OH
 LiOH→Li+OH
 Ca(OH)2→Ca2++2OH
 NH3+H→NH4
 Ba(OH)2→Ba2++2OH
 Mg(OH)2→Mg2++2OH
 Al(OH)3→Al3++3OH
 Fe(OH)2→Fe2++2OH
 Fe(OH)3→Fe3++3OH
 Cu(OH)2→Cu2++2OH
(完全電離を記す)





<酸化物>
 HやOHを持たない酸化物でも,酸性や塩基性を示す事がある。

@ 二酸化炭素CO2や二酸化硫黄SO2は,水にいくらか溶けて酸となり,さらにその一部は水と反応して,HをH2O分子に与えるので,酸であるといえる。

 CO2やSO2のように,酸のはたらきをする酸化物を,酸性酸化物という。陰性の元素,特に非金属の酸化物には,酸性酸化物が多い。ただし,COやNOは水に溶けず,塩基とも反応しないので酸性酸化物ではない。

(例) CO2,SO2,SO3,NO2,P4O10

  CO2+H2O→H2CO3
  CO2+H2O→HCO3+H
  
  SO2+H2O→H2SO3
  SO2+H2O→HSO3+H

  SO3+H2O→H2SO4
  SO3+H2O→HSO4+H

  3NO2+H2O→2HNO3+NO
  3NO2+H2O→2NO3+2H+NO


A 酸化ナトリウムNa2O,酸化カルシウムCaOなどは,水と反応して水酸化ナトリウム,水酸化カルシウムなどの塩基を生じる。
 
  Na2O+H2O→2NaOH
  CaO+H2O→Ca(OH)2
 
 また,これらの酸化物は酸の水溶液中ではHを受け取って,塩と水を生成する。

  Na2O+2HCl→2NaCl+H2O

酸化鉄(V)Fe2O3や酸化銅(U)CuOなどは水に溶けないが,これらの酸化物も酸の水溶液中ではHを受け取る。

  Fe2O3+6H→2Fe3++3H2O
  CuO+2H→Cu2++H2O

 これらのように,Hを受け取って塩基のはたらきをする酸化物を,塩基性酸化物という。金属元素の酸化物には,塩基性酸化物が多い。


B 酸化アルミニウムAl2O3,酸化亜鉛ZnOなどのように,酸と塩基の両方のはたらきをする酸化物を,両性酸化物という。両性元素の酸化物には,両性性酸化物が多い。

  Al2O3+6HCl→2AlCl3+3H2O
  Al2O3+2NaOH+3H2O→2Na[Al(OH)4]

  ZnO+2HCl→ZnCl2+H2O
  ZnO+2NaOH+H2O→Na2[Zn(OH)4]





補足(オキソニウムイオン)
 詳しい研究で,酸性の原因であるHは不安定なので,水溶液中で単独に存在することはなく,水分子と配位結合して,主にオキソニウムイオンH3Oとして安定化して存在することが明らかになった。  
 しかし,必要な場合を除いては,水溶液中でのオキソニウムイオンH3Oは,Hと書き表すことが多い。
 オキソニウムイオン.jpg
 




補足(共役の酸・塩基)
 共役(きょうやく)は,2つのものがセットになっていること。
 酸HAがHを放出してできたAは,Hを受け取ることができるので塩基である。このとき,HAとAを互いに共役な酸・塩基であるという。

 HA ⇄ A+H
 @ HAは,酸として働く。
 A Aは,塩基。

 共役.jpg
    





<酸塩基の強弱>
 同一濃度を溶解させた酸でもHの濃度が異なる場合がある。

 これは酸から生じるHが異なるためである。(塩酸から生じるHは多いが,酢酸から生じるHは少ない)

 生じるHが大きいほど酸性は強いということになる。ほとんどが電離して多数のHを生じるものを強酸といい,少ししか電離しないものを弱酸とよぶ。塩基性についても同様。

 溶解した電解質の量に対する電離した電解質の割合を電離度という。

 20151222183040-00011.jpg

 強弱.jpg

@ 強酸
 H2SO4,HNO3,HCl(,HBr,HI)
 電離度(α)≒1(覚える)

A 弱酸
 強酸以外のその他(わざわざ覚えない)
 電離度(α)はいろいろ。問題文にてそれぞれ与えられる。


B 強塩基
 アルカリ,アルカリ土類の水酸化物
 電離度(α)≒1(覚える)

C 弱塩基
 強塩基以外のその他(わざわざ覚えない)
 電離度(α)はいろいろ。問題文にてそれぞれ与えられる。





<価数>
 酸1分子が出しうる水素イオンの数を酸の価数といい,塩基1分子が出しうる水酸化物イオンの数または受け取ることができる水素イオンの数を塩基の価数という。

 基本的には,持ちうるHやOHの数である。

 しかし,酢酸は4つHを持つが1価であるので注意。また,アンモニアも,ブレンステッドの定義にて受け取れるHの数なので1価である。


1価の酸=H○○
 HNO3,HCl,CH3COOHなど
2価の酸=H2○○
 H2SO4,H2CO3,H2C2O4など
3価の酸=H3○○
 H3PO4など


1価の塩基=○○OH
 NaOH,KOH,NH3など
2価の塩基=○○(OH)2
 Ca(OH)2,Mg(OH)2など
3価の塩基=○○(OH)3
 Al(OH)3,Fe(OH)3など





<pH>
 水溶液の液性は,水素イオン濃度 [H] の大きさで表すことができるが,[H] の値は一般に小さいので,そのまま用いるのには不便である。

そこで扱いやすい値にするため,水素イオン濃度 [H] の逆数の常用対数pHを用いる。

すると,水素イオン濃度の指数部分だけを表せる。(逆数にすると1×10−○→1×10になり,さらに常用対数にすると1×10→○になる)


 pH=−log10[H]         
 ([H]=1×10−○→pH=○)
 ([H]=1×10−1→pH=1)
 ([H]=1×10−2→pH=2)
 ([H]=1×10−3→pH=3)


[H]は次のように求められる。


 [H]=C(酸の濃度)×α(電離度)×n(価数)
([OH]=C(塩基の濃度)×α×n)


また,25℃では,水溶液中の[H]と[OH]の積は1.0×10−14に保たれるので,


 [H]×[OH]=1.0×10−14
   …(水のイオン積KW(25℃))


ゆえに,pH0からpH7までは酸性,pH7は中性,pH7からpH14は塩基性となる。


 20151227141247-0001.jpg

 20151227141247-00011.jpg


●酸●
@[H]を求める。
 [H]=C×α×n

ApHを計算する。
 pH=−log10[H]


●塩基●
@[OH]を求める。
 [OH]=C×α×n

ApOHを計算する
 pOH=−log10[OH]

BpHを計算する
 25℃であれば,水溶液中の[H]と[OH]の積は1.0×10−14になるので,
[H]×[OH]=1.0×10−14より,
−log10([H]×[OH])=−log10(1.0×10−14)
   ↓
−log10[H]−log10[OH]=−log10(1.0×10−14)
   ↓
 pH+pOH=14
ゆえに,
 pH=14−pOH


補足(常用対数計算)
log1010=1
log101=0
log1010n=nlog1010=n  
log10ab=blog10a   
log10(a×b)=log10a+log10b 


(log102=0.3,log103=0.48とする)
◆0.01mol/Lの塩酸のpH◆
c=0.01,塩酸は強酸なのでα=1,塩酸=HClなのでn=1。
@[H]=C×α×nより,
  =0.01×1×1
  =0.01
  =1×10−2
ApH=−log10[H]より,@の値を用いて,
  =−log10(1×10−2)
  ↓
  ↓log10(a×b)=log10a+log10bより,
  ↓  
  =−log101−log1010−2
  ↓
  ↓log10ab=blog10aより,
  ↓  
  =−log101−(−2)log1010
  ↓
  ↓log101は0,log1010は1なので,
  ↓
  =2

◆0.02mol/Lの塩酸のpH◆
c=0.02,α=1,n=1。
@[H]=C×α×nより,
  =0.02×1×1
  =0.02
  =2×10−2
ApH=−log10(2×10−2)
  =−log102+2
  ↓
  ↓log102は0.3なので,
  ↓
  =−0.3+2
  =1.7

◆0.05mol/Lの塩酸のpH◆
c=0.05,α=1,n=1。
@[H]=C×α×nより,
  =0.05×1×1
  =0.05
  =5×10−2
ApH=−log10(5×10−2)
  =−log105+2
  ↓
  ↓log105はlog1010/2なので,
  ↓ log1010−log102
  ↓ゆえに,1−0.3=0.7
  ↓
  =−0.7+2
  =1.3

◆0.06mol/Lの塩酸のpH◆
c=0.06,α=1,n=1。
@[H]=C×α×nより,
  =0.06×1×1
  =0.06
  =6×10−2
ApH=−log10(6×10−2)
  =−log106+2
  ↓
  ↓log106はlog10(2×3)なので,
  ↓ log102+log103
  ↓ゆえに,0.3+0.48=0.78
  ↓
  =−0.78+2
  =1.22

◆0.1mol/Lの塩酸のpH◆
c=0.1,α=1,n=1。
@[H]=C×α×nより,
  =0.1×1×1
  =0.1
  =1×10−1
ApH=−log10(1×10−1)
  =1


◆0.005mol/Lの硫酸のpH◆
c=0.005mol/L,硫酸は強酸なのでα=1,硫酸=H2SO4なのでn=2。
@[H]=C×α×nより,
  =0.005×1×2
  =0.01
  =1×10−2
ApH=−log10[H]より,
  =−log10(1×10−2)
  =2

◆0.01mol/Lの硫酸のpH◆
c=0.01,α=1,n=2。
@[H]=C×α×nより,
  =0.01×1×2
  =0.02
  =2×10−2
ApH=−log10[H]より,
  =−log10(2×10−2)
  =−log102+2
  =−0.3+2
  =1.7

◆0.02mol/Lの硫酸のpH◆
c=0.02,α=1,n=2。
@[H]=C×α×nより,
  =0.02×1×2
  =0.04
  =4×10−2
ApH=−log10[H]より,
  =−log10(4×10−2)
  =−log104+2
  =−log1022+2
  =−2×0.3+2
  =−0.6+2
  =1.4

◆0.05mol/Lの硫酸のpH◆
c=0.05,α=1,n=2。
@[H]=C×α×nより,
  =0.05×1×2
  =0.1
  =1×10−1
ApH=−log10[H]より,
  =−log10(1×10−1)
  =1

◆0.1mol/Lの硫酸のpH◆
c=0.1mol/L,α=1,n=2。
@[H]=C×α×nより,
  =0.1×1×2
  =0.2
  =2×10−1
ApH=−log10[H]より,
  =−log10(2×10−1)
  =1−log102
  =1−0.3
  =0.7


◆0.001mol/Lの硝酸のpH◆
c=0.001mol/L,硝酸は強酸なのでα=1,硝酸=HNO3なのでn=1。
@[H]=C×α×nより,
  =0.001×1×1
  =0.001
  =1×10−3
ApH=−log10[H]より,
  =−log10(1×10−3)
  =3

◆0.01mol/Lの硝酸のpH◆
c=0.01,α=1,n=1。
@[H]=C×α×nより,
  =0.01×1×1
  =0.01
  =1×10−2
ApH=−log10[H]より,
  =−log10(1×10−2)
  =2

◆0.1mol/Lの硝酸のpH◆
c=0.1,α=1,n=1。
@[H]=C×α×nより,
  =0.1×1×1
  =0.1
  =1×10−1
ApH=−log10[H]より,
  =−log10(1×10−1)
  =1

◆0.04mol/Lの酢酸のpH(電離度0.025)◆
c=0.04mol/L,α=0.025,酢酸=CH3COOHなのでn=1。
@[H]=C×α×nより,
  =0.04×0.025×1
  =0.001
  =1×10−3
ApH=−log10[H]より,
  =−log10(1×10−3)
  =3

◆0.1mol/Lの酢酸のpH(電離度0.016)◆
c=0.1,α=0.016,n=1。
@[H]=C×α×nより,
  =0.1×0.016×1
  =0.0016
  =1.6×10−3
ApH=−log10[H]より,
  =−log10(1.6×10−3)
  =3−log101.6
  ↓
  ↓log101.6はlog1016/10なので,
  ↓ log1016−log1010
  ↓ゆえに,
  ↓ log1016−1
  ↓さらに, 
  ↓ log1024−1
  ↓したがって, 
  ↓ 4×log102−1=1.2−1=0.2
  ↓  
  =3−0.2
  =2.8

◆0.2mol/Lの酢酸のpH(電離度0.01)◆
c=0.2,α=0.01,n=1。
@[H]=C×α×nより,
  =0.2×0.01×1
  =0.002
  =2×10−3
ApH=−log10[H]より,
  =−log10(2×10−3)
  =3−log102
  =3−0.3
  =2.7


◆0.01mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液のpH◆
c=0.01mol/L,水酸化ナトリウムは強塩基なのでα=1,水酸化ナトリウム=NaOHなのでn=1。
@[OH]=C×α×nより,
  =0.01×1×1
  =0.01
  =1×10−2
ApOH=−log10[OH]より,
  =−log10(1×10−2)
  =2
ApH=14−pOHより,
  =14−2
  =12

◆0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液のpH◆
c=0.1mol/L,α=1,n=1。
@[OH]=C×α×nより,
  =0.1×1×1
  =0.1
  =1×10−1
ApOH=−log10[OH]より,
  =−log10(1×10−1)
  =1
ApH=14−pOHより,
  =14−1
  =13

◆0.05mol/Lのアンモニア水のpH(電離度0.02)◆
c=0.05mol/L,α=0.02,アンモニアは1価なのでn=1。
@[OH]=C×α×nより,
  =0.05×0.02×1
  =0.001
  =1×10−3
ApOH=−log10[OH]より,
  =−log10(1×10−3)
  =3
ApH=14−pOHより,
  =14−3
  =11

◆0.1mol/Lのアンモニア水のpH(電離度0.013)◆log1013=1.11
c=0.1mol/L,α=0.013,n=1。
@[OH]=C×α×nより,
  =0.1×0.013×1
  =0.0013
  =13×10−4
ApOH=−log10[OH]より,
  =−log10(13×10−4)
  =−1.11+4
  =2.89
ApH=14−pOHより,
  =14−2.89
  =11.11





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2015年04月14日

【有機】有機物,元素分析,異性体,官能基

<有機物>
 むかし,有機化合物は,生体に関連する(生体を構成する,生体が作り出す)物質を意味し,生体反応なしには合成されないものと考えられていた。
 しかし,1828年にウェーラーによってシアン酸アンモニウムNH4OCN(無機化合物)から生体反応を利用することなく尿素NH2CONH2(有機化合物)が合成され,それまでの有機化合物の概念が根底から覆された。
 ゆえに,現代では,生体との関連性を問わず,炭素骨格を有する化合物であれば有機化合物と理解されている。

※ ただし,二酸化炭素,炭酸塩,シアン化物等は有機化合物と見なされず,無機化合物に分類される。





<元素分析>
 C,H,Oを構成元素とする有機化合物を完全燃焼すると,有機化合物中のCはすべてCO2に,HはすべてH2Oになる。
 この性質を利用すると,有機化合物の組成式(実験式)を求めること(元素分析)ができる。
 元素分析.jpg


○装置○
元素分析3.jpg
@ 乾燥したO2を燃焼管に導き,質量を正確に測定した試料CxHyOzをバーナーで加熱して燃焼させる。

A @によって生じたH2Oを塩化カルシウムに完全に吸収させる。(このとき,CO2は吸収されず通過する。)

※ 塩化カルシウムは,乾燥剤である。

B @によって生じ(Aで塩化カルシウム管を通過し)たCO2をソーダ石灰に吸収させる。

※ ソーダ石灰は,塩基性の乾燥剤なので,CO2だけではなくH2Oも吸収してしまうので,必ず塩化カルシウムの後に設置する。


○計算○
 塩化カルシウム管の質量変化(試料から発生したH2Oの質量),およびソーダ石灰管の質量変化(試料から発生したCO2の質量)を測定し,以下の手順によって試料の元素組成を分析する。

@ 試料から発生したH2OおよびCO2の質量から,試料に含まれていた各元素の質量を以下のように算出する。
元素分析1.jpg

A 以下のように各元素の質量をモル比に変換し,試料の組成式を決定する。
元素分析2.jpg

※ 試料に含まれていた各元素の質量比が分かっている場合はAから。





<異性体>
 同一の分子式でありながら構造が異なるために性質も異なる分子同士の関係を,互いに異性体であるという。異性体は,その構造の相違性の観点から以下のように分類される。

 20150413105603-0004.jpg

○構造異性体 :構成原子の結合順列(原子のつながり)の違いによって生じる異性体。

○立体異性体 :原子団の立体配置(空間的な位置関係)の違いによって生じる異性体。
@ 幾何異性体(シス‐トランス異性体)
 二重結合などを形成している炭素原子(C=C)に結合した原子あるいは原子団の配置が異なるために生じる異性体。C=Cなどが回転できないことによって生じる。
 同一の原子あるいは原子団がC=Cを境として同じ側に向いた配置(上記では左の分子の配置)をシス型配置という。逆に,互いに交差した配置(上記では右側の分子の配置)をトランス型配置という。
※ 炭素間の自由回転出来ない為に生じるので,環状構造でも幾何異性体を生じる。

A 光学異性体(鏡像異性体)
 不斉炭素原子に結合した原子あるいは原子団の配置が異なる場合に生じる異性体。
光学異性体は互いに物理的性質(沸点,溶解度など)および化学的性質(反応性)は変わらず,光学的性質(旋光性)および生物学的性質(生理活性)が異なる。不斉炭素原子とは,4種の相異なる原子あるいは原子団と結合した炭素原子をいい,C*と表現される。
※ 不斉炭素原子を1つだけもつ光学異性体は互いに鏡像の関係にあると同時に互いに重ね合わせることができないので,鏡像異性体あるいは対掌体とも呼ばれる(左右の手の平同士の関係にある分子という意)。
※ 互いに鏡像体であっても,不斉炭素原子が存在しなければ光学異性体にはならず,同一分子となる。また,不斉炭素原子が2個以上ある場合において,分子内に対称面が存在する場合にも,その鏡像体は同一分子となる。





<官能基>
 炭化水素の水素原子を他の原子または原子団で置き換えるといろいろ性質の異なる化合物ができる。
 たとえば,CH4は水に溶けない気体だが,その水素原子1個をヒドロキシ基−OHで置き換えたCH3OHは,液体で水によく溶ける性質がある。
 ヒドロキシ基のように,その化合物の特性を示す原子または原子団を官能基という。
官能基1.jpg





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2015年03月23日

【理論】分子構造,電気陰性度,極性,水素結合

閲覧数の多い≪おすすめ≫ページです。


 ●●● 目次 ●●●
 @ 分子の形≪おすすめ≫
 A 電気陰性度
 B 極性≪おすすめ≫
 C 水素結合


<分子の形>
分子には,それぞれ決まった形がある。
 ↓
これは,原子が所有する価電子(分子中では共有電子対または非共有電子対)の配置が決まっているからである。
 ↓
その原子の価電子の配置は「原子の電子対間の電気的な反発が最小になるような配置」である。(ちなみに,この方法では,共有電子対と非共有電子対,あるいは一重結合と二重結合の間の反発力の違いを考慮しなくてよい。すなわち,これらの間での反発力はみな等しいと仮定する)
 ↓
ちなみに,電子対間の反発が最小になるような配置は,電子対間の距離が最大となる配置である。


例. 水分子の形
@ 電子対を考える
 まず,水(H2O)の電子式より,中心の酸素原子Oには,水素原子Hと結合する共有電子対が2つ,結合に関与しない非共有電子対が2つあることが分かる。
 電子式.jpg

A 電子対の反発を考える
 次に,電子対の配置を考える。酸素原子Oのまわりにある電子対間の反発が最小になるような=電子対間の距離が最大となる配置は,中心原子Oを正四面体の中心に置いて,各頂点方向にぞれぞれの電子対が向かい,電子対間の角度が互いに等しくなったときである。
 分子構造11.jpg   

B 分子の形を考える
 最後に,2つの電子対の先に水素原子を配置すると,水分子の形が完成する。
 分子構造22.jpg
        
 このようにして予測されたH2O分子は,折れ曲がった形で,結合角は109.5°である。この形は実験的に知られている水分子の形と同じである。結合角は測定されている値(104.5°)に近い値である。


■■■絶対におさえる構造■■■
●CH4正四面体
@ 中心Cの電子対は,共有電子対4対→計4対。
A 4つの電子対の配置は,正四面体。
B 4つの電子対の先にHを付ければ,CH4分子完成。
5分子構造5 - コピー - コピー.jpg5分子構造5 - コピー.jpg

●NH3三角錐
@ 中心のNの電子対は,非共有電子対1対+共有電子対3対→計4対。
A 4つの電子対の配置は,正四面体。
B 3つの電子対の先にHを付ければ,NH3分子完成。
 ↓
つまり,正四面体の3頂点を使っているので,三角錐。
5分子構造5 - コピー - コピー.jpg5分子構造5 - コピー - コピー (2).jpg

●H2O●折れ線
@ 中心のOの電子対は,非共有電子対2対+共有電子対2対→計4対。
A 4つの電子対の配置は,正四面体。
B 2つの電子対の先にHを付ければ,H2O分子完成。
 ↓
つまり,正四面体の2頂点を使っているので,折れ線。
5分子構造5 - コピー - コピー.jpg5分子構造5 - コピー - コピー (2) - コピー.jpg

●CO2直線
@ 中心のCには,2重結合を形成している電子の集団が2つ→計2つ。
A 2つの電子の集団の配置は,直線。
B 電子対の先にOを付ければ,CO2分子完成。
5分子構造5 - コピー - コピー - コピー.jpg5分子構造5 - コピー - コピー - コピー - コピー.jpg

※ やや難しい構造
●C2H4●長方形(平面)
(中心のCは,共有電子対3対(二重1つと単2つ)=計3対で,電子対は三角形)

●C2H2●直線
(中心のCは,共有電子対2対(二重1つと単1つ)=計2対で,電子対は直線)

●BF3●正三角形
(中心のBは,非共有電子対0対+共有電子対3対=計3対で,電子対は正三角形)

●O3●折れ線
(中心のOは,非共有電子対2対+共有電子対1対(二重1つ)=計3対で,電子対は三角形)

●SO2●折れ線
(中心のSは,非共有電子対2対+共有電子対1対(二重1つ)=計3対で,電子対は三角形)

●H3O●三角錐
 H2O分子の非共有電子対にHが配位結合するので,三角錐。

●NH4●正四面体





<電気陰性度>
 異なる原子が共有結合を形成したとき,それぞれの原子が共有電子対を引き付ける強さを数値で表したものを電気陰性度という。電気陰性度はその値が大きいほど陰性が強いことを示す。
  電気陰性度.jpg
 同一周期では,原子番号増加とともに大きくなる(ただし,希ガスは化合物をつくりにくいので,電気陰性度の値はない)。
 同族では原子番号の減少とともに大きくなる。
 以上よりまとめると,右上ほど大きい
 両原子の電気陰性度の差が大きいほど,結合の極性は大きい。





<極性>
 異種原子からなる2原子分子では,共有電子対は陰性の強い原子に少し引き付けられて,共有電子対が両原子に正と負の電荷δ,δを生じて片寄って分布するため,極性を生じて極性分子となる。
  極性1.jpg
 しかし,結合に極性があっても,分子が対称的な構造をもつ多原子分子の場合は極性が互いに打ち消し合って無極性分子になる場合もある。 


■■■極性の有無の判断法■■■
@ 電気陰性度を比較して,各結合に極性があるか?
A @の偏りが,分子の対称性で分子全体で打ち消すことがないか?


※ 絶対におさえて欲しい
@ H2無極性(結合に極性がない)
A HF=極性
 Fの方がHより電気陰性度が大きいので,共有電子対はFの方に引き付けられている。
  極性.jpg
B H2O=極性(各結合に極性があり,折れ線構造であるため打ち消されない)
C H2S=極性(各結合に極性があり,折れ線構造であるため打ち消されない)
D NH3極性(各結合に極性があり,三角錐構造であるため打ち消されない)
E CH4無極性(各結合に極性があるが,正四面体構造であるため打ち消される)
F CO2無極性(各結合に極性があるが,直線構造であるため打ち消される)





<水素結合>
 電気陰性度のとても大きいF,O,N原子とH原子の結合では大きく分極しており,正電荷を帯びたH原子が,近くの電気陰性度の大きい原子(F,O,N)に近づき,主に静電気的引力に基づく結合を分子間に形成する,これを水素結合
 水素化合物のうち,H2O,NH3,HFの各分子間に水素結合が形成される。なかでも,水分子は1分子当たり水素結合が4か所あり,沸点が最も高い。
 水素結合11.jpg





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2015年03月18日

【理論】イオン結合,共有結合,金属結合

<イオン結合>
 陽イオンと陰イオンとが,静電気力(クーロン力)によって引き合って生じる結合を,イオン結合という。

 価電子が少ない原子(金属)と価電子が多い原子(非金属)が出会うと,価電子が少ない原子が電子を放出して,価電子が多い原子が電子を取り入れる。こうして生じた陽イオンと陰イオン間でも形成されていると考えられる。

 陽イオンと陰イオンとの間にクーロン力(静電気力)が働いているために結合に方向性が生じない。

●●●解答point●●●
 金属元素と非金属元素は,基本的にイオン結合により結び付く。





<共有結合>
 価電子が多いが閉殻に満たない原子が出会い,互いに不対電子を出し合い,共有電子対をつくって,これを共有し合うことによる結合を,共有結合という。(ちなみに,共有結合に関与していない電子対は非共有電子対とよばれる)
 
 共有結合.jpg共有結合2.jpg
 
 一般的に共有結合でつながって分子と呼ばれる集団になる。ちなみに,1組の共有電子対による結合を単結合,2組による結合を2重結合,3組による結合を3重結合という。

●●●解答point●●●
 非金属元素同士は,基本的に共有結合により結び付く。


補足<電子式>
 原子中の価電子には,2個の対になったものがある,これを電子対。対にならずに単独のまま存在する電子を不対電子という。

これらを参考にすると結合,特に共有結合が考えやすくなる。

価電子8コが安定な電子配置なので,電子対が4対あると安定な電子配置である。逆に言えば不対電子があれば不安定である。

 つまり,この不対電子を解消しようと共有する。

そして,これら電子対を考えるのに重要なのが電子式である。電子式とは,元素記号の上下左右に順番に最外殻電子の数だけ点をつけていった式。電子式を考えるときは,元素記号の上下左右の場所がそれぞれ電子の座るソファがあると考えると分かりやすい。各ソファに座れる電子数は2個であり,最初は順番にそれぞれのソファに1個ずつ座る。





<金属結合>
 価電子が少ない原子が,陽イオンと価電子になり,この価電子(=自由電子)が陽イオン間を自由に運動して全部の陽イオンを結びつける結合は,金属結合という。
 金属結合.jpg

●●●解答point●●●
 金属元素同士は,基本的に金属結合により結び付く。

 金属が電気や熱の良導体であるのは,自由の移動によって,電気や熱のエネルギーが容易に運ばれるからである。

 また,金属単体中の金属イオンどうしは,直接結合しているわけではないので,力が加わると金属イオン間の相互位置をずらすことができる。このため金属は展性延性に富む。
 延性・展性.jpg




 
<配位結合>
 非共有電子対をもつ分子や陰イオンが,非共有電子対を一方的に供与して形成される共有結合のことを配位結合という。
 配位結合を有するものに,アンモニウムイオンNH4やオキソニウムイオンH3Oなどがある。このとき,非共有電子対を供与する分子や陰イオンを配位子という。配位結合はあくまで共有結合の一種であり,結合の強さや結合距離なども共有結合と全く同等である。
 配位結合.jpg
※ 絶対におさえる2つ
@ NH4
 NH3+H→NH4
A H3O
 H2O+H→H3O
※ やや難しいもの
@ O3
A SO2
B オキソ酸





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 大変申し訳ありませんが,投稿がバラバラですので,分野ごとにご覧頂けると幸いです。

posted by アボガドロ at 23:52 | Comment(1) | TrackBack(0) | 理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする